なぜ楽天はFCバルセロナに257億円払うのか 来季からはメッシ選手の胸にも「RAKUTEN」

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――なぜ楽天を選んだのか。

バルトメウ:選んだのは会社ではなく人。三木谷さんは価値観を共有でき、同じビジョンを持ち、共に歩める素晴らしい人だ。

2015年末にピケの紹介で、サンフランシスコにある三木谷さんの家に招かれた。同世代でもあったのですぐに意気投合し、サッカーの未来や世界の見方がとてもよく似ていることがわかった。三木谷さんなら、バルサに新しい価値をもたらしてくれると確信した。

――新たなパートナーを迎えてFCバルセロナはどう変わっていくのか。

バルトメウ:楽天は日本やアジア・オセアニアで高いブランド力を持つ企業だ。バルサはグローバルなクラブだが、さらにワールドワイドになるだろう。常に世界のトップ4以内に入っていることがバルサの戦略であり、楽天はそのための重要なパートナーになる。

バルサはただのサッカークラブではない。「クラブ以上の存在」というチームのスローガンにある通り、コミュニティーを育て、子供たちを育む存在でもある。楽天は若くてモダンなテクノロジー企業であり、きっとバルサに新しい価値を運んできてくれるだろう。

――選手の年俸が高騰し「サッカーがマネーゲームになった」という指摘もある。

バルトメウ:われわれは利益のためにクラブを運営しているのではない(サポーターの代表である21人のボードメンバーは無給)。しかしグローバルな競争力を維持するためには安定した財政基盤が欠かせない。(楽天との契約が満期になる)2021年には10億ユーロの収入を目指している。

楽天が進める「世界戦略立て直し」のカギに?

現在、欧州の有力チームのメインスポンサーになっている日本企業は、イングランド・プレミアリーグの人気チーム「チェルシー」をサポートする横浜ゴムくらいだ。

1990年代にはシャープがデビッド・ベッカムを擁する「マンチェスター・ユナイテッド」、ソニーがデルピエーロを擁するイタリア・セリエA「ユベントス」、トヨタ自動車がイタリア「フィオレンティーナ」とスペイン「バレンシア」のメインスポンサーを務めるなど、日本企業は存在感を発揮していた。

この当時と比べると欧州サッカーのスポンサー料は高騰しており、簡単に手を出せるディールではなくなったともいわれる。しかし、ネットの普及によってファン層が東南アジアなどの新興国に広がるなど、広告としての価値がグンと増しているのも事実だ。

楽天は現在、世界戦略の立て直しを進めている最中。FCバルセロナという世界最強ブランドのひとつを使えることにより、戦略のオプションが広がったことは間違いない。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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