貧困家庭の高校生が乗り込む「泥舟」の悪循環

親のために始めた「JKビジネス」にはまる子も

このような家庭では、親は収入を得るために、家族と共に過ごす時間を犠牲にして働いている。家族が一緒に食事をするどころか、ほとんど顔を合わさず、会話もできずに生活しているのだ。家庭では誕生日会や正月、クリスマスなどの年中行事をやったことがない。もちろん、家族旅行の経験はないし、日帰りのハイキングやバーベキューもしたことがなく、テーマパークや遊園地、動物園にも行ったことがない。親が毎日の生活に精いっぱいで、子どもの頃から、ほとんど親に手をかけてもらわずに高校生になっている。だから、彼らの体験のバリエーションは、極端に少ない。

高校生になると進路指導に役立てるため、自己理解・進路適性検査を行うことが多い。しかし、「教育困難校」ではこれらの検査を行うことすら困難である。それは、「植物を育てることが好き」や「ジグソーパズルは最後までやりとげる」「旅行を計画するのが好き」といった質問事項に答えられないからだ。なぜなら、それらの体験がまったくないからである。

さまざまな体験は、人間の能力や適性を発見し伸ばすチャンスとなる。教育熱心で経済力もある親は、家庭でも意図的にいろいろな体験の機会を子どもに与えている。このような家庭の子どもと比べると、幼児期から多彩な体験をすることができなかった子どもたちは、自分の能力や適性に気づく機会もなく、また、成功体験も少ないため自己肯定観も低くなってしまう。

自分の親に同様の接し方をされていた、親たち

さらに、親が大きな不安や不満を抱えている家庭では、子どもが親の強い感情のはけ口になっている場合もある。幼い頃から虐待やネグレクトを体験した生徒も、「教育困難校」には少なくない。一見普通の親子関係に見えても、事あるごとに「あんたなんか産まなければよかった」とか「どうせ、あんたなんか何をやってもダメね」といった、親の冷たい言葉の暴力にさらされている生徒もいる。それでも、必死に親の愛情を得ようと、親の顔色を見ながら、傍らに寄り添おうとする子どもの姿は哀れを誘うほどだ。しかし、その親たちも実は、自分の親に同様の接し方をされていたというケースが多い。愛し方を知らない親と愛され方を知らない子の間で、世代間の連鎖が続いているのだ。

生活に追われ、ほとんど自分を気にかけてくれない親、親としての愛情以上に、別のものへの憎しみや怒りを子どもにぶつけてくる親、そんな親に育てられた子どもが多いのに、「教育困難校」の生徒たちは驚くほど親や家族思いである。寂しさから同類の仲間とつるんでいるヤンキーたちも、本当のところはとても親や家族を大事にしようとする。大事にしないとすぐに壊れてしまうもろい家族関係と、生徒たちにはわかっているからだろうか。

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