社会に出る前の学生に、多額の借金を負わせる日本の奨学金制度は、それ自体に対する批判も多い。しかし、学生に貸与された奨学金を学費として受け取るのは、教育機関である大学である。日本学生支援機構の遠藤勝裕理事長は、「奨学金制度のステークホルダーは、学生以上に大学だ」と指摘し、奨学金の貸与にふさわしい教育サービスを提供しているかを、今後は機構としてもチェックする必要があると話す(奨学金「貧困問題」、最大の責任者は誰なのか)。まずは今年夏頃に、奨学金延滞者の割合を、学校別に公表するという。
実社会で求められることと、大学が教える内容がマッチしていないという声は以前から根強い。また、偏差値が低い大学に対しては、「本当に必要なのか」という風当たりが、特に強いようだ。このような状況の中、現場に身を置く大学教員は、どのようなことを感じ、世間の批判にどのように答えるのか。奨学金が支える「Fランク大学」の葛藤と不安でも取材に協力してもらった、聖学院大学(埼玉県上尾市)の柴田武男教授に話を聞いた。
教育に熱心な教員ばかりではない現実
――奨学金問題の記事に対する読者からの反応を見ても、大学に対する目が厳しさを増している印象があります。
現状では、大学の教育が社会の期待に応えられていないと言われても、直ちに否定することはできない。奨学金の問題など、学生の教育のことについて熱心に考えているのは、自分の周りでも片手で数えられるくらいかな、と思いますし。
日本学生支援機構の遠藤理事長が言う、「奨学金の貸与にふさわしい教育サービスを提供すること」の必要性をもっとも実感しているのが、われわれFランクの大学です。「少人数で、面倒見がいい」ことを大学としても掲げているけど、こんなことは経営の大前提なんですよね。
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