臓器を“丸ごと”作る!ついに来る、神の医療

異分野から来た科学者が作る、「細胞シート」の衝撃

岡野教授がトップを務める、東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究所。足を踏み入れると、「組織ファクトリー」など見たこともない設備が並び、近未来のラボの雰囲気を醸し出している。

同研究所は、岡野教授の理想を具現化した場所だ。ここに集っているのは、工学の専門家と心臓外科医、内科医、消火器科医、眼科医、歯科医など幅広い分野の医師たち、そして獣医や理学系研究者。研究所内には日立製作所、大日本印刷、旭化成、テルモ、日本光電、オリンパスといったそうそうたる企業のエンジニアも結集した。テクノロジーがどんどん医学に流れ込む。そんな生態系ができている。

多様な人材を束ねる岡野教授が目指すのが、大勢の患者をコストをかけずに治すこと。その手段として、近い将来、世界中に「細胞シート工場」を作る予定だ。

細胞シートの産業化は、自分の患者を治すだけの医学に警鐘を鳴らす岡野教授ならではの発想だ

今までは細胞シートを医師自ら手作業で作っていたので、高コストにならざるをえなかった。だが、工場でロボットを使って全自動で大量生産すれば、無人だから無菌状態を保つことができ、場所をとらないのでコストも下げられる。いずれはiPS細胞で作った細胞シートをストックしてすぐに使えるようにしておくような、「バンク化」も進むかもしれない。

細胞シートの普及に向け、国も動き出している。3月下旬には安倍晋三首相が研究所を視察した。4月26日には再生医療の実用化を目指した再生医療推進法が参院本会議で可決され、成立。東北大学、東京女子医科大学、国立成育医療研究センター(世田谷区)、大阪大学、長崎大学の5つの病院は「細胞シートによる再生医療実現プロジェクト」でスーパー特区指定を受けている。

特区全体はひとつの病院とみなされ、ある病院で作った細胞シートを別の病院の患者に使うことができる。個々の病院がクリーンルームを構えて細胞シートを作るよりも、はるかに効率がいい。

将来、細胞シートが基盤技術として再生医療を引っ張っていくことは間違いない。ただ、岡野教授の頭にあるのは、細胞シートという特定の技術にとどまらない、さらに大きなスケールの問題意識だ。

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