藤野:今回の労災認定が行われた後、ツイッターで某大学教授が、「100時間程度の残業で過労死なんて情けない」という投稿をし、大炎上しました。海外のエリートと呼ばれる人たちは、残業100時間なんて普通にこなしていますから、まあ言わんとすることはまったく分からなくもない。私自身、若い頃はそのくらい働いていたので、半分は分かる。でも、もう半分は分からない。なぜなら時代が違うから。どの組織でも、管理職以上の人は、新しい働き方を真剣に考える必要があります。
渋澤:私の知り合いにシングルマザーの方がいらっしゃって、子供が4歳のとき、通勤時間に1時間半もかかって自分が長時間働きながら子育てをするのが大変で、どこがいちばん良い環境のところなのかと考えに考えました。
彼女が行き着いたのは、なんとアフリカのルワンダです!ここでタイ料理レストランのオーナーとして起業しているのですが、通勤に時間がかからないし、仕事場に子供を連れていっても文句は出ないし、子供を連れていけない時でも、面倒を見てくれる大人が周りに大勢いる。自分で起業していますから仕事は長時間です。しかし、子供と一緒に暮らすワーク・ライフ・バランスが取れているんですね。瀬戸内にIターンした人たちも同じですが、人生の質を高められる場所を積極的に探して、そこに移るという柔軟な考え方をすることも大事ですね。
日本人は仕事を「好き嫌い」で選んでも良い
藤野:これは日本人特有なのかもしれませんが、善悪、損得で物事を判断するけれども、好き嫌いで判断することがない。というか、好き嫌いで判断するのはいけないことだ、とすら思っている日本人が多いのではないでしょうか。
でも、私は好き嫌いで判断しても良いと思うのですよ。今の仕事が好きでなければ辞めればいい。そして、そういう判断を、他人も尊重するべきです。例えば、電通の話とは関係なく、職場の悩みで自殺した人に対して、「なぜ辞めなかったの?」という声がありますが、そこには日本の文化的な背景もあると私は思います。日本は変化を嫌う風潮があります。好きではない仕事、好きではない会社でも、なかなか辞められないのは、変化を嫌うからではないでしょうか。もっと変わることを尊ぶようにしないといけません。
渋澤:今回は、電通という大企業に勤めていた、東大卒の若い女性が犠牲になったから深刻な報道のされかたをしていますが、よく考えてみると、40代、50代の男性管理職で自殺している人は、大勢いるんですよね。ただ、騒ぎにならないだけで、ひっそりと死を選ぶ中高年男性は、結構多いと思います。若い人たちが「働かない中高年」の犠牲になっているという指摘もありますが、実はこうした中高年自身も、自殺の危険にさらされているのです。
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