中野:今月の日銀金融政策決定会合で、黒田日銀総裁が、これまでの金融政策について総括的な検証を行うと言っております。どんな内容になるのか、マーケット関係者などは戦々恐々だと思いますが、9月5日に黒田さんが行った講演の内容が、おそらく「総括的な検証」を裏付けるものになるのではないでしょうか。
渋澤:日本って、意思決定には時間がかかるのですが、いったんこうだと決めると、それを徹底的に行うという良い傾向がありますよね。しかし、これには負の側面もあって、目標などを決めた後に環境が異なるなど想定外のことが起こっても「頑張る」と言ってなかなか方針を変えられない。それが70年ぐらい前の悲劇を引き起こしたとも言えるのではないかと思うのですが、日銀の金融政策にも同じことが連想できますね。
0%を政策目標にするべきだった
最初は異次元金融緩和によって、おおむね2年間で2%の物価上昇率を実現するという目標設定をしたものの、いろいろな外部要因もあり、達成できなかった。だから、マイナス金利に踏み込むなど金融緩和をさらに強化して、何が何でも2%という物価目標を達成しようとしています。日銀組織内でもいろいろな意見があると推測しますが、思っていることが言えない「空気」がないことを願いたいですね。
藤野:2%という物価目標の設定が本当に適正だったのかどうかも、改めて考える必要があるでしょうね。そもそも2%という数字には何の根拠もなかったわけだし、デフレを止められれば良かったわけですから、まずは0%を政策目標にするべきだったと思います。つまり、2%は高すぎた目標だったのですよ。少なくとも現時点において、デフレは止められたわけですし、物価目標を0%にしておけば、異次元金融緩和を継続する必要もなかった。
これは企業経営も同じで、先日、私たちが投資している先の経営者が、どう見ても強すぎるという予想数字を出してきたのです。それに対して私は、「この数字は強いので、もう少し下げたほうが良いのではありませんか」と申し上げると、「う~ん、でも達成できるかもしれないしな~」と言うのです。日銀の物価目標も同じで、2%はどう見ても高すぎる目標設定なのですが、おそらく黒田さんは半信半疑で、達成できるかもしれないと思っているのではないでしょうか。
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