日本株「上昇後に下落」の展開を見込むわけ 市場参加者の「米景気・金利観」が定まった
先週発表された米国の諸経済指標をみると、事前の市場の期待を下回るものが目に付いた。特に8月のISM製造業指数(1日発表、7月の52.6から49.4に低下、市場予想は52.0)や雇用統計(2日発表、非農業部門雇用者数前月比は7月の27.5万人増から15.1万人増に減速、市場予想は18.0万人増)が公表された直後は、米ドル相場の短期的な下振れもみられた。
しかし週を終えてみれば、ドル円相場は上昇し、104円近辺で引けている。株価も、ニューヨークダウ工業株指数は、木曜日はザラ場安値から切り返し、週末金曜日も上昇した。こうした市場の動きについて、「経済統計が弱かったので利上げ懸念が後退し、それによって株価が上昇した」という解説もあるようだが、米10年国債利回りが上昇気味で1.60%台を回復したことと矛盾する。
魔法を生んだFRB副議長の援護射撃
おそらく正しい解釈は、8月26日(金)のイエレンFRB議長のジャクソンホール会合における講演内容、並びにその直後のCNBCとのインタビューにおけるフィッシャーFRB副議長の「援護射撃」(フィッシャー副議長の方が「主役」だったとの声も)により、雇用中心に米経済が堅調であり、年内確実に利上げを行なうとの景気・金利観が、市場参加者に深く刻み込まれた、といったものではないだろうか。
その「魔法」に投資家がかかり、通常なら少しでも弱い経済統計が出ると、米ドル売りに走りそうな市場が、「いやこの程度の数値であれば、米国経済回復の流れを阻害するような内容ではない」と解釈したのだろう。したがって、長期金利は若干ながら上昇気味で推移し、米国株価は金利上昇懸念より景気回復期待が勝って強含み、米ドルも対円で上昇したのだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら