渋澤:でも、その政治家を選んだのは国民なのだから、国民の責任でもあります。
中野:まあ、それはそうですが、せっかく総括する機会なのだから、本当の思いをしっかり述べてもらいたいですね。
渋澤:少なくともETFの買い入れを増やした程度では、将来への期待感を高めることなど不可能ですよ。そもそも、市場の材料になるくらい日銀がETFを買い入れることで、株式市場の価格を意図的でなくても操作していること自体がおかしな話です。
中野:米国のQEは、まだ正義がありました。なぜなら、買い手が完全にいなくなったからです。あのままだと、米国の資本市場は死に絶える恐れがありました。だからFRBが最後の買い手になって、市場機能を維持したわけですが、日銀の異次元金融緩和は、この手の正義がどこにも見当たりません。ETFの買い入れにしても、決してETFの買い手がまったくいなくなったわけではなく、日々、きちっと市場の取引は成立しています。そうである以上、日銀のETF買い入れは、市場機能の維持が目的ではなく、単に株価を維持するためだけのことでしかなく、それは不健全と言わざるをえません。
もう一段マイナス金利を深掘りすれば変わる
渋澤:これだけ金利が下がっているにもかかわらず、現金をため込んでいる国民にも責任の一端はあります。経済理論の根底には経済合理性に基づいて行動する個人が必ずいます。金融緩和が理論どおりに効果が出ない理由は、経済的非合理性で行動しない個人の存在かもしれないですね。
中野:だからこそ、マイナス金利をさらに深掘りすれば良いのではないかと、私は思うのですよ。もう一段、マイナス金利を深掘りすれば、預貯金金利も実質的なマイナスにならざるをえないでしょう。法律上、預貯金のマイナス金利は認められていないとのことですが、手数料を徴収することで実質的なマイナス金利にすることは可能です。そうなった時、個人マネーは銀行預金からリスク資産へとシフトするのではないでしょうか。経営者にとっても、外部からの資金調達がしやすくなるので、レバレッジ経営が可能になります。
藤野:ただ、レバレッジ経営を行うとしたら、きちんとした使い道があるかどうかが問われます。少なくとも現状、マイナス金利で資金調達側に有利な条件がそろったとしても、積極的な設備投資を行うまでには至らないでしょう。
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