中野:2%という物価目標を下方修正すれば良かったのですね。
渋澤:仮に2%という物価目標を達成できたとしても、日銀が大量にETFを買い続けた結果、日銀がすべての上場企業の大株主になり、市場の流動性や「価格発見機能」が損なわれるような状況になったとしたら、それでも物価目標を達成した日銀に対してグッジョブと言えるのでしょうか。そこをもっと真剣に議論してもらいたいと思います。
中野:そのように、周りの人間が黒田総裁に言ってくれれば良いのですが。
アベノミクスの本質と逆行するETF買い
渋澤:アベノミクスの本質は企業の競争力を高めることだと思っていますが、ETFを買い続けるなんて政策は、まったく無意味だと思います。良い会社も悪い会社もまとめて買い上げるということはガバナンスによって企業価値を向上させるというアベノミクスの功績を逆行します。もし日銀が年間6兆円のETF買い入れを止めたら、その時点で日経平均株価は2000~3000ポイント下げるかもしれません。
でも、物価目標を達成できないからといって、これから毎年6兆円も日銀がETFを買い続けたら、日銀が保有する日本株のポジションは、「クジラ」と云われるGPIFよりも大きくなってしまいます。しかも、GPIFの運用資金は将来の年金者の積立金というリアルマネーですが、日銀がETFを買い入れるのに使うおカネは「お札を刷る」バーチャルです。輪転機さえ回せばほぼ無尽蔵に作り出すことができます。危険この上ない。「シン・ゴジラ」の登場ですよ。
藤野:日銀によるETF買い入れは、225銘柄を中心に機械的に買っているだけですから、確かに株価は値上がりしているものの、なんだか操り人形の胴体だけを持って、上に引っ張り上げているようなイメージなんですよ。胴体は上がっているけれども、首や手足はダラ~ンとしている。ちなみに首や手足は中小型株のことです。私のように、首や手足の部分を中心に投資している者にとっては、今の株式市場は本当に不自然に見えます。渋澤さんも指摘しているように、7月以降は株式市場の価格発見機能も、かなり弱ったように感じます。
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