藤野:アパレルのネット通販が主体のスタートトゥデイって会社があるじゃないですか。「ZOZOTOWN」を運営していることで知られている会社ですが、ここは9時から15時までの「6時間労働制」を導入しています(8時間労働の賃金で、業務が早く終われば帰ってもよい)。社員は皆さん、いつも笑顔で、雰囲気が良い。ただし、成果はきちんと上げる。こういう会社の社員は、きっと良い働き方をしているのだなと思いますね。
渋澤:でも、すべての会社がそれを出来るかといえば、なかなか難しいですよね。
累進課税制度を強化すれば格差は是正されるか
藤野:だから、残業は1日2時間までというように、キャップをはめてしまえば良いのです。で、それを超える残業をせざるを得ない場合は、たとえば残業1時間につき、残業代を正規時給の3倍にする。これを法律で決めてしまえば、残業は大幅に減りますよ。
なぜなら、社員が残業をすればするほど、残業代がかさむわけですから、企業は残業を抑制しようとするはずです。ただ、労働時間が制約を受けるなかで、同じ作業量でも、それをこなせる人とこなせない人との能力差が歴然としてきます。これまでは、能力に差があったとしても、長時間働くことで、その差をカバーできましたが、労働時間が制約を受ければ、それもできなくなります。すなわち、格差が固定化されるおそれがあるのです。
そこで、格差を是正するために、私は累進課税の強化が必要なのではないかと、最近思うようになりました。つまり、能力がある人はどんどん稼ぐ。そして稼いだ中から多めに税金を負担していただく。ただ、それでは優秀な人間の働く気をそぐおそれがあるので、納税額によって勲章のようなものを授与する。あるいは、年収2000万円を超える人は、その超過分の3分の1までを、住宅や自動車の購入費や交際費、映画やコンサートの鑑賞費用などを控除できるようにするといったインセンティブを持たせれば、累進課税を強化しても、働く意欲を失わずに済むのではないかと考えます。
渋澤:私は累進課税の強化には反対です。税制度だけに富の再分配をすることに頼ってしまうと、民の「善なる意識」が弱くなるからです。民主主義国家なのだから、やはり各人、自分の出来る範囲で、きちんと納税するべきでしょう。
藤野:1年前までは、私もそう思っていたのですが、ここに来て、能力のある人と、そうでない人との格差が、あまりにも大きくなってきたと感じるようになり、累進課税の強化が良いのではないかと思うようになった次第です。
渋澤:富の配分を政府に強制的に決められるのは、民の弱体化へつながるので結果的に良い社会は実現できません。あるレベルのハードルレート以上の所得を、自ら自主的に社会へ再分配しなければ、その部分は累進課税するという形なら、良いかもしれません。
中野:税金の問題は、いろいろ根が深いですね。でも、税金の問題に言及せざるを得ないという事実は、働き方を考えていくにあたって、単に労働時間を減らせば万事めでたしというわけではないことを物語っています。1億総活躍社会を目指すなら、働き方について多面的な議論が必要になりそうです。
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