日銀のETF買いは「国家に対する冒涜」
中野:年末ですね~。今日は軽く呑みながら、2016年の振り返りと2017年の展望について話をしてみましょうという企画です。2016年を振り返って、何が大きなニュースだったのか。まずは一人ずつ、いちばん注目したニュースをピックアップしましょうか。
渋澤:良いニュース、それとも悪いニュース?
中野:どっちでも。
渋澤:じゃ、いちばん腹立たしかったことを(笑)。マーケットで生きている者として、やっぱりこれは取り上げなければと思うのは、日銀のETF買いです。国家に対する冒涜だとすら思いました。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による日本株買いは、年金として集まっているリアルマネーで日本株に投資しているわけですが、日銀のETF買いは、日銀が刷ろうと思えば、いくらでも刷れるおカネでの投資です。要は、バーチャルマネーによる投資です。だから際限がない。難しいこと言わないで株価が上がればそれで良いじゃん、という国家統制的な資本主義は非常にまずいことだと思いました。このままだと、ETFを通じて日本政府が日本の上場企業の最大の株主になりますから。
中野:12月8日に、ECBのドラギ総裁が2017年4月以降、国債などの購入規模を現在の月800億ユーロから600億ユーロに減らすことを発表しました。ECBがドイツ国債を買い続けた結果、このままだとマーケットに流通しているドイツ国債がなくなってしまうからです。マーケットに流通しているものを買って、市中におカネを供給するという形の量的金融緩和には、時間的な制約があることが、この一件ではっきりしました。でも、それは日銀が行っているQQE(量的・質的金融緩和)でも同じで、すでに市場で買える日本国債は底を尽きかけていますし、ETFだって同じです。黒田日銀総裁は9月21日の記者会見で、QQEの実質的な敗北宣言を出しました。アベノミクスの第1の矢の敗北宣言。私はこれが2016年の一番の出来事だと思います。
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