3Dプリンタが製造業を変える 著名コンサルタント、ジョセフ・パイン2世に聞く

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フォーチュン500社やベンチャー企業の経営アドバイザーであるStrategic Horizons LLPの共同創設者。 ハーバード・ビジネス・レビュー、ウォールストリートジャーナルなどに寄稿するほか、世界経済フォーラムやTEDでも講演。

――マスカスタマイゼーションは、「メイカーズ」にも通じる話だと感じました。

その前に、『MAKERS』の著者であるクリス・アンダーソンについてちょっと触れたいと思います。数年前にある会議で2人がそろってプレゼンターを務めたことがあります。彼はロングテールに付いて話をしました。小売業においてはインターネットによって、それほどの数量がでない尻尾の先までが売れるようになる、という話です。

私はルートロン・エレクトロニクスの話をしました。照明コントロールの会社で、何千という品番がある。この中には大きなロットで作る大量生産品もある。しかし年に100しか売れない品番が400ある。10個しか売れないものも400ある。数個しか売れないようなものも1200くらいあり、1個しか売れていないものもあった。この会社は1970年代からこうした製造をしている。私は、こうした製造のあり方が、多くの製造業を変えるマスカスタマイゼーションだと説明したのです。

ところが、クリス・アンダーソンはその話を聞いたときに、「ロングテールが成り立つのは小売り。製造業では無理だ。マスカスタマイゼーションなんてありえない」と言った。サンタクロースを信じない人なんだな、と感じました(笑)。ですから『MAKERS』を読んで驚きました。非常にすばらしい内容だと思うんですが、この著書の中では彼は明らかにマスカスタマイゼーションのトレンドを認めています。

3Dプリンタには大きな可能性がある

マスカスタマイゼーションのマスは、単に数量のことを言っているのではなく、生産主体もマスになる、ということを意います。例えば「テックショップ」というサンフランシスコを拠点とする会社があり、そこには多くの工作機械が置いてあります。会員はメンバーシップ・フィーを払えば、そこにある工作機械を使うことができる。四角形をしたクレジットカード決済用の白い端末はテックショップの機械によって、試作品が作られました。

――ジャック・ドーシーが創業したスクエアのことですね。5月から日本でもサービスを開始しました。

小規模の小売業者であれば、スクエアによる決済を非常に気に入ると思います。クリス・アンダーソンの話に戻りますが、彼も私も、3Dプリンタによってもたらされる、新たな可能性の信奉者です。私の一番最近の著書は『Infinite Possibility』(無限の可能性)です。そこでは3Dプリンタとマスカスタマイゼーションの融合について書きました。例えば仮想世界でデザインをして、そのデータを元に現実の製品ができる。デジタルテクノロジーの威力です。

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