3Dプリンタが製造業を変える 著名コンサルタント、ジョセフ・パイン2世に聞く

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――1つ1つ、自分がこだわって作ったものがオーセンティシティになる、ということですね。

答えはYesです。と言いますのは、3Dプリンタで作ったものには、まさに自分自身が投影されている。そしてまた、自分自身の分身のような感じもする。自分が欲しいと思っていたものを手に入れたときの感動とともに、オーセンティシティであり続けます。

アップルはオリジナル・オーセンティシティ

――オーセンティシティに関して1つお伺いさせてください。アップルとサムスンの比較です。タッチ型のスマートフォンでは、アップルがオーセンティシティで、サムスンなどその他のメーカーはコピーキャットだと思います。しかし、コピーキャットが今では世界シェアトップになっている。一方でオーセンティシティにいたはずのアップルが苦戦している感がある。

アップルは確かに多少はシェア面で苦戦しているとはいえ、何百億ドルという年商規模は変わらないし、利益率も高い。それほど苦戦しているとはいえないでしょう。しかしながら、サムスンの台頭には目覚しいものがある。しかし、多くの人にオーセンティシティと感じる機種を聞いてみると、スマートフォンではアップルと結びつけて連想する人が多い。アップルは独創的なデザインにより、「アップルならでは」という世界を作り出している。まさにオリジナル・オーセンティシティを体現している見本です。

それに対してサムスンは多くの人にとってコピーキャットだと思われている。ただ、そのまねの仕方が巧みで、新たに機能を付け加えている。すでにあるものを拡張しているのがサムスンです。現実問題として、オリジナル・オーセンティシティを拡張したサムスン流のやり方が、多くの人に好まれています。

アップルは、あまりにも大きな成功を収めたからこそ、成功の犠牲者になっているのです。大量に消費されて多くの人が使うようになって普及してくると、見る目が変わります。少人数が使っていたときには「クールだ」と感じていたのに、あまりにも多くの人が使うようになると、クールさをある程度失わざるをえない。ですからアップルは他の製品分野においてオリジナル・オーセンティシティを確立することで現在の停滞感を抜け出すしかありません。私たちが見たことのないものを出していくというのが、進む道だと思います。

――日本のエレクトロニクスを象徴する企業は、ソニーです。コンサルタントの立場から見て、ソニーはどうすれば輝きを取り戻せると思いますか。

私がソニーに対して抱いている印象は、機能を盛り込むことばかりやっていた、というものです。私の言葉でいえば産業経済のままだった。それに対し、アップルは経験経済へと移行しており、機能を絞り込んでいた。

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