「独り勝ち」という格差のあり方
ちなみに日本は所得格差が11番目に大きく、その水準は34カ国の平均を上回っています。拡大していると言われる日本の格差のあり方を考えるにも、格差先進国アメリカのケースを学ぶことは、有意義なのです。
最近のアメリカの所得格差の特徴は、一部の富裕層による「独り勝ち」の様相が極端に強まっていること。昨年、有名な経済学者であるスティグリッツ氏の著書の邦訳『世界の99%を貧困にする経済』が出版され、話題になりましが、同書では、繁栄の分け前が1%の最上層によって独占されるという構図が批判の的になっています。
これを地で行く国こそが、景気拡大の果実のほとんどが上位1%の「勝ち組」に集中するようになってきた今のアメリカです。
1990年代の景気拡大では、アメリカの家計の実質所得は平均32%増えました。同じ期間に上位1%の実質所得は98%増加しており、この期間に増えたアメリカ家計の所得の45%が上位1%に集中していた計算になります。
2000年代の景気回復では「勝ち組」の勢いが強まり、この期間に増えた所得の65%を上位1%が手に入れました。
1%の「勝ち組」が93%の所得を得る
さらに、金融危機後の2009~2010年になると、上位1%の優位は圧倒的になります。
アメリカの家計を平均した実質所得が2%しか伸びていないのに対し、上位1%の実質所得は12%増えました。1%の「勝ち組」が手に入れた所得の割合は、なんと全体の93%に達しています。
格差が広がっていても、努力によって「勝ち組」になりやすくなっているのであれば、それほど問題はないかもしれません。
しかしアメリカ全体でみれば、1%の「勝ち組」がどんどん優勢になる一方で、中間層や低所得層の国民が上の所得階層に移動できる可能性は高まっていない。
特に男性が上位の所得階層に移動するのは、以前よりも難しくなっているのが現実です(女性については、社会進出が進むに従って、上の所得階層に移動できる可能性があります)。