技術革新と教育の、仁義なき「競争」
技術革新と教育の関係は、「競争」にたとえられます。1950年代のアメリカでは、技術革新の速さよりも、教育水準の上昇スピードの方が速かったと言われます。
アメリカ人が学校に通う年数はどんどん長くなり、親よりも子供のほうが高い教育を受けるのが普通になりました。高い技術を持つ労働者が豊富に育ったために、高学歴の人と学歴が低い人の給料の差(「学歴プレミアム」といいます)は小さくなっていきました。
その頃、競争の勝者は教育だったわけです。今は逆で、技術革新のほうが速く進んでいます。
1980年代、親子の学歴が同程度になる
「競争」の様子が変わってきたのは1980年代頃。アメリカの教育水準が足踏みを始めました。通学年数は伸び悩み、親の世代と子供の世代の学歴にはほとんど差がなくなります。
その一方で、ITをはじめとする技術革新のスピードが加速しました。競争の勝者は技術革新へと入れ替わり、学歴プレミアムは上昇に転じたのです。
オバマ大統領は、教育の充実に力を入れています。2011年の一般教書演説では、「2020年までに大学卒業率で世界一になる」という目標を掲げました。
格差の是正は一筋縄ではいきません。技術革新やグローバリゼーションが格差の原因であるとすれば、こうした流れを政策で止めるのは容易ではありませんし、正しい政策だとも限りません。
教育が技術革新との競争に巻き返すことは、格差の問題を解決するための重要な一歩になります。だからこそオバマ大統領は、アメリカの教育に期待を寄せているのかもしれません。