オバマ大統領が理想とするのは、生活水準の伸び悩む中間層が豊かな暮らしを満喫できると同時に、低所得の人たちでも頑張れば中間層に手が届く社会です。
彼にとって格差の問題は、2008年に最初の大統領選挙に臨んだ当初からの関心事項でした。当選後、最初の記者会見では、選挙の意味を問われて、「国民が私に託した仕事は、中間層の家族や中間層になろうと一生懸命に努力している家族を助けることです」と答えました。
オバマ1期目の医療制度改革
第1期のオバマ大統領の政策運営で垣間見えた、格差是正への意識の好例が、医療保険制度改革です。アメリカは国民皆保険制度をとっておらず、現役世代は勤め先の企業などを通じて民間の医療保険に加入するのが普通です。
ただ、アメリカの医療保険の保険料は決して安くありません。貧しい人たちはメディケイドという公的保険に加入できますが、そこまで貧しくはないものの、民間の医療保険に加入することもできないという人たちが、アメリカには5000万人近く存在するのです。
中低所得層に多い「無保険者」の人たちは、十分に医者にかかることもできず、健康面のリスクにおびえながら生活しなければなりません。重病にでもなろうものなら、医療費だけで生活が成り立たなくなることさえありえます。
オバマ大統領の医療保険制度改革の狙いのひとつは、こうした「無保険者」を減らすことにありました。メディケイドに加入できる基準を緩和し、これまでは所得が基準よりも高すぎた人でも公的保険に加入できる道を開いたのです。
当然のことながら、メディケイドの加入者を増やすにはお金がかかります。このお金を捻出する方法にも、格差の是正に向けたオバマ大統領の思いが反映されました。
メディケイドの拡充などの制度改革に必要な費用について、その一部を富裕層に対する増税で手当てしたのです。