あなたは今、なぜ株を買うのか? アベノミクス3本の矢は、標的に当たったのか

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痛みの伴わない成長戦略など無用

持続可能な期待のためにも、結局は経済および企業業績の実績に基づく数値で“3本目の矢”である成長ストーリーを長期的に描けるかが問題だが、これがいちばん難しい。

そのためには「日本は長年の無駄な構造をこのように変えている!」という本気の改革ストーリーを実績で見せていく必要があり、そのためには郵貯民営化の徹底を含む支持基盤に痛みの伴う改革が必要になるし、それ以前に政治の無駄を省く議員の大幅削減も含まれる。(たぶんできないだろうが)自民党が自らの支持基盤を痛める成長ストーリーを参院選前に打ち出せるか見ものだが、逆に言えば誰も困らない成長戦略なら無意味だと断定してよい。

財政の矢は需要を高めるが、サプライサイドの強化に回らなければ、ただでも緩い財政の規律を弱めて長期金利に跳ね返ってくる。金融の矢は円安を招いたが急激でボラティリティの高い為替変動は副作用も多い。打ち出の小槌がない以上、何を捨てて何を得るのか、誠実に国民にコミニュケーションすべきだ。

ちなみに為替が、週の頭に103円になったかと思えば、昨日は95円まで一気に上がったが、このように急激に振れる不安定な状況だと、ドルを円に換える為替差損リスクが大きくなり、対日投資が鈍る原因にもなるので、為替の乱高下に対する政策も重要になる。

急激に円安に振れれば揺り戻しの円高も急激になるので、一時的に円安が進んだからというだけで“放った矢”の効果を図ることはできないのである。

資産運用会社の広告に惑わされてはいけない

ぶつぶつ申し上げてきたが、最後に「投資すべきかどうか」という問いに対し、私見を申し上げよう。こういう株高が続くと、そのモメンタムを利用して受託資産を増やそうと、“ストロングバイ・ジャパンキャンペーン”とか怪しげな日本株キャンペーンを資産運用会社が開始するが、その手のキャンペーンに乗って儲かっている人を見たことがない。これは何を隠そう、(東洋経済以外の)週刊誌や新聞やテレビで株高を知った頃には、すでに時遅しで、あなたより遅く株価上昇トレンドに気づく人がほぼいないためである。

そこで冷静に考えるべきは、はたして今まで株式投資などしたことなかった大阪の高槻市に住む普通のおばちゃんであるあなたのお母さんに、真っ先においしい金儲けの話が回ってくるか、ということである。もし「なぜこの株を買うのか」という自問の答えが「隣町の田中さんの奥さんも買ってはるから。あの人、20年前NTTで大儲けしはってんで!」であれば、決して買ってはならない。

私はこれを“地元のおばさんインディケーター”と呼んでいるのだが、田舎にいる遠戚のおばさんが「ムーギーちゃん、今どの株買うたらええんや? なんかあんた、投資の仕事してるらしいやないの。ウチようわからへんけど、銀行の担当者が“ふぁんど”いうやつ勧めてくるねけど、これ、ぎょうさん儲かるんか?」などと言いだしたら、市場のピークは過ぎ去っていると思っていただいて間違いない。

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