さて、AKB総選挙で指原さんが15万票を獲得し、1位になられた。心よりお祝い申し上げたい……と言いたいところだが、AKBの前途には明らかに、さまざまな困難が待ち受けている。というわけで今は総選挙が終わって数日経った6月11日、小雨降り注ぐフランスの彼方から親愛なる読者の皆様に、グローバル企業戦略の観点から見たAKBについて所感を書かせていただきたい。
“挑戦者”でなくなったAKBが直面する課題
まず前田敦子、篠田麻里子といった創世記からの人気メンバーが次々と抜け始めているのは、安倍なつみ、後藤真希脱退の穴を埋められず窮退したモーニング娘。を髣髴とさせる。勝手な予想をさせていただくと、現在のエースである大島優子さんの引退も近づいているだろう。
AKBが挑戦者だったときは、前田敦子さんなどが長期にエースとして君臨できたが、AKBがエスタブリッシュメントになってしまった今、“普通の女の子が上を目指す”というコンセプトを保つことが難しく、結果的にエースの回転率を高め、下克上ストーリーをAKB内部で再現することが重要になってくる。しかしこれに起因するアイドル回転率の高さ(入れ替えの速さ)は、中心的な横綱の安定性を望む保守的な日本市場の性向との矛盾にぶつかる。
長年、人気が続いたAKBは、過去のヒット曲との比較にもさいなまれるだろう。たとえば、AKBのコンセプトの中で出てきた既存の大ヒット曲を上回る曲を出すのは困難だ。これは少女時代に「ジニ―」や「Oh!」以降これは、というヒット曲がないこと、またKaraも「Lupin」などの全盛曲以降、大ヒットがないこと、また誰かさんの「グローバルエリートは見た!」も初期のコラム以外、全然人気がないことと共通している。
クオリティの一貫性がプロの証だが、出されるAKBの新曲のクオリティにもばらつきがみられて、高品質を保障できていない。実際のところ、2012年8月の「ギンガムチェック」以来、新曲の売り上げも着実に落ちている。
今後AKBはタレントの質、曲の質、そして”挑戦者”というコンセプトの持続性といったそのすべてで、今後、大きな困難にぶち当たるだろう。おニャン子クラブやモーニング娘など歴代人気アイドルグループの人気継続期間と比較しても、そろそろ潮時といった感じではないか。
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