先駆者のオタク層が、一般ファンと入れ替わる
国内で大ブームを巻き起こしたAKBは、すでに国内市場が飽和してしまい業績が鈍化している。今でもテレビにCMに引っ張りだこなのだろうが、株価と同じで強い上昇モメンタムが終わると、成長率を維持できず人気は陰っていくものである。
これは、“すごい勢いで人気が上がっている”という理由だけで市場に参加してきていた多くの、マーケティング用語で言うところの“フォロワー”のAKBへの忠誠心が流動的だからであり、また創生メンバーを支えたハードコア・オタクの皆様が創生メンバーの引退とともに市場を去っていくからである。「あの小さな劇場で誰も客がいなかったときから、俺たちが応援して育ててきたんだ」というハードコアなサポーターも徐々に引退していくので、表面上の顧客数は衰えなくても、その顧客の構成基盤が脆弱になっていく。
今まではAKBという商品の広告費用を顧客に負担してもらいながら収益を上げる、というおいしい商法が成り立っていたが、コアメンバーとコアファンが抜けていく中、新しいキャラクターを導入してグループ内で新陳代謝を図っていくだけでは追いつかず、海外進出やSDNなどの他セグメントへの進出など、新たな戦略で成長の糸口を探ってきた。
AKBによるアイドル市場のコンソリデーション
AKBの戦略は、日本の市場が成長しない産業でインダストリーコンソリデーションが起きるのと似ており、国内のメディア市場、アイドル市場が縮小していく中(調査によっては拡大しているものもあるが)、実質的にライバル不在とも言える巨大なアイドルマーケットシェアを獲得し、広告や流通網への交渉力で大きな規模の経済を獲得した。
ちなみにグループ内の人数が多いため、これはAKBがほかのアイドルグループと闘っているというより、AKB内部でいったんアイドル市場を囲い込む“アイドルのブロック経済化”といえるかもしれない。また、AKBの一員になればAKBのプラットフォームを使って、ひとりの普通の女の子のマーケティング価値を急上昇させることから、アイドルのインキュベーション・プラットフォームとも言い換えることができるだろう。
AKBは人数も多く絶えず数人のスーパースターキャラクターのポートフォリオを抱えている。つまり1人や2人突然抜けてチームが崩壊、という特定アイドルへの依存リスクをヘッジできている、という意味で“アイドルの機関化”に成功した。
これはAKBグループで稼げる収益の分配において、アイドル側のプロデューサー側に対する価格交渉力を下げるので、どれだけ売れてもメンバーに“大金持ち感”が漂っておらず、庶民派アイドルのイメージを維持できる。
結果的にマーケティング機能や露出チャネルのプラットフォームを、AKBというブランドの規模の経済を生かして独占するようになり、国内アイドル市場はほぼAKBグループに独占されるようになった(余談だが、アイドルに独禁法は適用されないのかな? 通産省のAKBファンの方がお読みでしたらこちらまでお願いします)。
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