松下幸之助「経営者は遊んではいけない」

経営の神様が問わず語りに語ったこと

まあ、個人的に、健康のために静かにやっておるというのなら、それはそれでええけどな。仕事の最中に、自分のところの従業員が汗出して一生懸命仕事をしておる、そういうときに心許して遊ぶ、そういう社長では、きみ、発展するものでも発展せんで。それどころか、潰れてしまうわ。

いまは、ちょうど新緑のころやからな、庭の景色が一段ときれいやね。とりわけ、もみじの葉っぱが、色鮮やかという感じがするな。まるで蛍光塗料をサッと掛けたような、そんな様子や。どの木もどの枝もどの葉も、みんな光り輝いておるようで、見ておっても、心躍るような気分になる。この庭は、いまがもっともきれいな、ええ時期かもしれんな。

うん、秋もええな。これも、もみじが紅葉するからな。それにな、冬の、雪の降ったとき、松の枝に雪がのこっておる、そういう景色もええもんやで。きみ、見たことあるか。冬になると、コケを傷めんようにするやろう、コケのうえに一面松の葉をかぶせて。松葉敷き。あれも、ええなあ。

熱意から成功の道は開ける

そやな、もうそろそろ、お昼にしよか。頼んでくれや。きみも忙しいやろ。休みもあまりないかもしれんが、からだには、十分気をつけんとあかんよ。わしはな、相当長生きするからな、これからも、いろんなことを次々にせんといかんわけや。あと八十年も生きるということになれば、取り組むべき仕事が無限にある。その仕事をやっていくときに、きみに、手伝ってほしいんや。だから、からだ大事にして、ええか、わしより早く逝ったらあかんで。

けどな、仕事をする、経営をするときに、なにが一番大事かと言えば、その仕事をすすめる人、社長の熱意やね。あふれるような情熱、熱意。そういうもんを、まずその人が持っておるかどうかということや。あれば知恵が生まれてくる。

経営者には、指導力が大事とかな、決断力が大事とか、行動力とか、まあ、いろんなことがいわれておる。たしかに、そういうものがあるにこしたことはないけれど、とにかく、経営者の最初の、というか基本の基本は、この熱情というか、熱意やな。

正しい熱意、素直な熱意あるところ必ず、経営成功の道が開けてくるわけや。熱意は成功へのハシゴやね。たとえば、販売のやり方がわからん、けど、なんとしても商売を成功させたい、そういう懸命の思い、情熱というものがあれば、そこに、なんとかしようという努力も生まれ、工夫も生まれて、成功の道が発見されるようになるんやな。

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