松下幸之助「経営者は遊んではいけない」 経営の神様が問わず語りに語ったこと

✎ 1〜 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

新しい商品を作りたい、そうほんまに考えるんやったら、他人に素直に教えを請う、尋ねる、訊く、指導を仰ぐ、謙虚に耳を傾けるということも出来るわな。経営のやり方、進め方も、どうしたら一番うまくいく方法なのか、その方法も考え出されてくる。

だから、経営がうまくいかん、どうも発展しないということであれば、翻(ひるがえ)って、ほんまの情熱、素直な熱意を、わがからだのなかに持っておるのかどうか、社長たる人は考えてみる必要があるな。熱心にやっておりますと言うけど、それが、ほんまもんかどうか、そこに尽きるわな。そやろ、商売を成功させたい、経営をうまく発展させたいという、燃えるような情熱があれば、おのずとそのときどきにおける成功の知恵が見つかるもんや。

正しい情熱があるかどうかで判断してきた

わしは人材を起用するときに、原則としては、その人のいろいろな能力よりも、その人に熱意があるかどうか、からだにみなぎるほどの、正しい情熱があるかどうかを、見て判断してきたな。そして大抵の場合、成功したな。

能力なんていうのは、だれでも大概は、そう差があるもんではない。だれでも同じようなもんや。だから人を起用するときに、能力からすれば、だいたい60点ぐらいもあれば、十分やね。あとは、その人の情熱でいくらでも伸びる。それが、能力はあるけれども熱意がない、熱意が不十分だということになれば、そういう人を、いくら起用してもだめやな。

それにな、熱心に社長がやっておる、朝も晩も、ときには休みの日も、身を粉にして社長が仕事に取り組んでおれば、従業員諸君も、ああ、うちの社長は、えらい熱心に一生懸命に仕事に取り組んでいる、情熱をもって、この会社のこと、われわれのことを考えてやってくれておる、ということになる。そうなれば、社員の人たちも、それでは社長、私たちも、熱意をさらに持って、私たちの仕事に取り組みましょう、ともどもに会社を発展させましょうということになる。社長が熱心な姿を見せれば社員の人たちも熱心になる。大将が進軍する先頭に立って、懸命な姿を部下に見せておれば、部下も大将と同じような気分になって、戦(いくさ)に臨むということになる。

けど、先頭は行くけど、馬上で大将がコックリ、コックリ居眠りしとる、居眠りまでせんでも、本当の熱心さが感じられないようでは、部下も、緊張してピーンとはりつめる気分というものは出せんわな。居眠りしとるのは、後ろからでもようわかる。本当の熱意がないというのも、ようわかる。熱意があれば、必ず事業は成功するな。けど、尋常一様な熱意ではあかんで。きっとこの会社を発展させよう、自分の命を賭(か)けて、発展させようという、からだごとの、正しい熱意でないとな。そういう社長でないと、会社は発展しないということやね。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事