アメリカは宇宙開発も多国籍 どうすれば日本に人材を集められるか?

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National Interest Waiverによる永住権の取得

話を戻そう。僕の場合はJPLへの就職活動を始める前に、まず永住権を取得する必要があった。永住権は、アメリカ人と結婚でもしないかぎり、まずはOPTか労働ビザでアメリカの企業に雇われた後に、雇用主にスポンサーとなってもらい取得するのが一般的だ。しかし僕の場合は、そもそも雇われるための前提条件として永住権が必要だったから、この方法は使えなかった。

そこで僕が用いたのが、National Interest Waiver(NIW)という制度だ。National interestとはずばり「国益」という意味である。つまり、アメリカの国益になる人材に対して、雇用主によるスポンサーなしでも永住権を与える仕組みである。

もう少し具体的には、「科学、芸術、あるいはビジネスにおいて卓越した能力を持っており、アメリカにおいて雇用することが国家に対して大きな利益となる」人材がNIWの対象となる(詳細はUS Citizenship and Immigration Servicesのホームページを参照)。僕の専門は工学だが、それは上記の表現では「科学」に含まれると解釈できる。この条件を満たすことを客観的に裏付けるために、しかるべき人たちからの10通程度の推薦状が必要とされる。

このように、国益にかなう人材を選択的に受け入れる仕組みを設けるあたりに、アメリカのしたたかさがうかがえる。

グリーンカードは本当に緑色をしている

このNIWという制度は、僕のように就職活動の時点で永住権が必要な場合や、在米経験のない日本人がアメリカへの転職活動をする際に非常に有用であるが、あまり知られていないようである。僕も当時JPLにいた日本人の先輩に教えられて初めて知った。

僕もNIWによって永住権を取得した。1年弱の時間と、約5000ドルの弁護士費用を要した。永住権の証明書であるグリーンカードが送られてきた封筒に、“Welcome to the United States – A Guide for New Immigrants(合衆国へようこそ-新移民のための手引き)”という冊子が同封されていた。そうか、僕は「移民」になったのか、とこのとき初めて気づき、うれしさと寂しさが入り混じった感慨に襲われたのを覚えている。

人材獲得競争

留学、永住権の申請、そして就職活動を通して実感したのは、アメリカは世界から優秀な人材を集めようとプラグマティックに行動している、ということだ。

そしてアメリカは、世界から人材を引き付ける魅力を持っている。豊かな国。自由な国。チャンスにあふれた国。そうした手垢のついたアメリカのイメージは、もちろん現実と乖離している面も多くあるし、日本人の目から見れば偽善的にさえ映るかもしれない。しかし、豊かさや自由やチャンスに乏しい国は依然多くあり、そのような国の人たちからみれば、アメリカは依然として抗しがたい魅力を持っているのだ。

そしてアメリカは、そんなアメリカン・ドリームに魅せられた大勢の人たちの中から、優秀な人材のみを選択的に拾い上げ、自らの力とするのだ。

そんなやり方を「汚い」と批判する人もいよう。しかし、汚かろうとなんだろうと、グローバル化の一途をたどる世界において、アメリカに限らず世界中の国が、優秀な人材の獲得競争を繰り広げている現実がある。スイス、シンガポール、韓国など、経済規模が比較的小さい国はなおさら露骨だ。そして日本も、自覚があろうとなかろうと、そんな熾烈な人材獲得競争にすでに巻き込まれているのだ。きれいか汚いかの問題ではなく、勝つか負けるかの問題なのだ。

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