NASA研究者が語る「宇宙開発の意義」

なぜ宇宙に大金を使うのか

新世代リーダーは、政治経済の分野だけに求められているわけではない。科学技術の分野にも、フロンティアを切り開く人材が必要とされている。当連載では、 航空宇宙工学という切り口から、新時代のリーダー像を探っていく。MITで航空宇宙工学の博士号を取り、NASAジェット推進研究所(JPL)への転職を決めた筆者が、宇宙への思いを語る。
(写真:NASA/ロイター/アフロ)

あと数日でNASAジェット推進研究所(JPL)での勤務が始まる。僕のJPLでの主な仕事は、無人惑星探査に関する研究・開発だ。平たく言えば、火星、木星や小惑星などにロボット探査機を送り込むための仕事だ。

宇宙開発には夢がある。未来がある。しかし一方で、厳しい批判もあることも承知している。

飢餓や貧困によって多くの命が地球上で失われているときに、なぜ火星に生命の痕跡を見つけることに労力を割くのか。失業して住宅ローンを払えない人が大勢いるときに、なぜたった数人の宇宙飛行士を宇宙に住まわせるために先進諸国は累計で10兆円もの大金をつぎ込んで国際宇宙ステーションを建設し、さらには月や小惑星、火星へ人間を送り出そうとするのか。そんな批判だ。漫画『宇宙兄弟』でもこの問いが取り上げられていた。

税金を使って宇宙開発の仕事をする者として、この問いに答える責任が僕にはある。前回の記事に書いたとおり、僕はMIT在学中、この問いに深く悩み、宇宙への夢を見失った要因にもなった。

だが、今の僕ならばこの問いに答えられる。もちろん、これは高度に哲学的な問いだから、すべての人が納得する答えはなかろう。だから僕は先生が生徒にテストの答えを教えるように、読者の皆さんに天下り的に答えを与えるというような尊大な考えは持っていない。むしろ、僕の少々異端的かもしれない考えを知っていただき、忌憚なきご意見をいただきたい。それが本記事の目的である。

なお、本記事に書かれていることは、あくまで僕個人の考えであることを断っておく。

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