出光と昭和シェル、迷走する経営統合の行方 創業家とは没交渉、期限延長でも拭えぬ不安

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今回の会見では報道陣から「経営統合がいつになるのか」という質問が飛び交った。この点に関して両社長は「2~3年かかるということはまったく考えていない」「出来るだけ早く、1年以内にはしたい」と口をそろえる。

だが、その前提条件と位置づけられる創業家側をどう説得するのか。出光の月岡社長は「この経営統合が最善のもの」「全てのステークホルダーの共同利害を考えれば、昭介名誉会長には理解してもらえる」と言う。

経営統合の期限をあえて切らないのも、「ゆっくり話をすることで大株主にしっかりと理解をしてもらうため」(同)と説明する。具体策についての答えは曖昧なものと言わざるを得ない。

どこで決着をつけるのか?

創業家側の代理人を務める浜田卓二郎弁護士(2016年7月、記者撮影)

会見で両社長は、経営陣が推し進める経営統合に理があり、販売店や社員、ステークホルダーの支持が得られていると積極的に訴えた。出光の月岡社長は「販売店組織である全国出光会の会長が昭介名誉会長に手紙を送った」ことを強調。創業者・出光佐三が築き上げた”大家族主義”を掲げ、「家族同様である販売店」の支持を得ていることをアピールする。

昭和シェルの亀岡社長も、創業家側が挙げる統合反対の3つの理由に昭和シェルのトップとして初めて意見を表明。一例として、昭和シェルには7つの労働組合があるが、そのうち5つは関係会社の組合で、出光本体には組合はなくても、関係会社も含めれば11もあることを指摘した。

一方で、議決権の33.92%を握る創業家への対抗策として、増資によって創業家側の影響力を弱めることや相対取得でなくTOBで一気に昭和シェルを子会社化する手もある。が、こうした手法は「採らない」(月岡社長)と明言。正攻法で創業家に経営統合に賛成を得る方針だという。

こうした、両社長の呼びかけに創業家側の対応はそっけない。会見終了後、創業家側は浜田弁護士などの名前で、「昨年12月から本件経営統合は『木で竹を継ぐ』ようなものであり、経営上得策ではないと判断し、反対を表明してきた。この考えからは今後とも変らない」「速やかに、かつ明確に『合併の白紙撤回』を決断して欲しい」と見解を発表している。

エスカレートする対立はどこで決着するのか。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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