今のところ、世界経済は好況の部類に属しているといえますが、それでも経営に失敗している日本企業は数多くあります。その代表例としては、エネルギー資源価格の下落を予見できなかった日本の大手商社が挙げられます。
三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅の大手総合商社5社の2016年3月期の決算では、エネルギー資源価格の大幅な下落により減損損失が1兆2000億円にまで膨らみ、5社合計の黒字は1443億円(前期は1兆0400億円の黒字)まで減少しています。三菱商事と三井物産は戦後初めての赤字に転落し、その他の3社も当初の計画に比べて黒字額は大幅に縮小することとなったのです。
日本の大手商社は、国際的な原油価格の高騰や中国の旺盛な資源需要が今後も続くだろうという安易な見通しのもと、エネルギー資源の開発に傾斜を強めていき、多額の投資を行ってきました。そのような強気な投資の背景には、「これからも新興国や途上国では人口が増加し、エネルギーや資源の需要は増え続ける」という国際機関(IMF、OECDなど)や民間シンクタンク(野村総研、大和総研など)の予測があったのは間違いないでしょう。
資源への投資が巨額だった2強
ところが、原油価格は2014年後半から下落を始め、1バレル100ドル以上していた原油価格は、2015年1月に50ドルを下回るようになり、2016年2月には一時とはいえ30ドルをも割り込むまでに下がってしまいます。2013年初頭に1トン150ドルを超えていた鉄鉱石価格も、2014年11月には70ドルを割り込み、2015年11月には50ドルを下回るようになっていました。
大手商社のなかでも2強といわれている三菱商事と三井物産が赤字になったのは、とりわけ他社よりも資源への投資が巨額になっていたからにほかなりません。2016年3月期の決算は三菱商事が1493億円の赤字(前期は4005億円の黒字)、三井物産が834億円の赤字(前期は3064億円の黒字)でしたが、資源関連の減損損失がそれぞれ4260億円、3500億円と巨額にのぼり、業績全体の足を大きく引っ張ってしまったのです。
両社に巨額の損失をもたらす主因となったのは、いずれも銅価格の大幅な下落にあります。銅価格は2011年のピーク時には1万ドルを付けたことがあったものの、2014年に資源バブルが崩壊し始めると、2015年11月には5000ドルまで下がり、2016年1月には4500ドルを下回るまでになっていたのです。銅鉱山を開発する企業の株式を取得するなどして、両社が銅の開発案件に投資をしたのは2011~2012年に銅価格が高値圏にあった時期なので、もっとも損失が膨らむパターンになってしまったというわけなのです。
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