「胸が熱くなる思いであります」――。事業報告を終えた岡藤正広社長はそう語った。
6月24日、伊藤忠商事の定時株主総会が大阪市内にあるホテルニューオータニ大阪で開かれた。来場者数は昨年より343人多い2202人(役員16名も含む)。朝10時から始まり、株主からの質問の数は19人20問(昨年は17問)、全体所要時間は2時間1分と、活発な答弁が行われた。
伊藤忠の歴史をまとめた15分ほどの動画を会場内のスクリーンで流し終えた後、岡藤社長が思わず漏らしたのが、冒頭の言葉である。「2015年度は当社の創業以来、初めて連結純利益・商社ナンバーワンとなりましたが、当社の先人たちがさまざまな挫折や失敗に直面しながら、努力と挑戦を積み重ねてきた長い歴史の上にあるものです。伊藤忠商事158年の夢として、株主の皆様と映像で振り返りたいと思います」(岡藤社長)。
「三菱商事と商社2強時代に入った」
その後も、岡藤社長が何度も説明を繰り返したのは、悲願の商社ナンバーワンになったことだ。純利益だけでなく、時価総額も2013年3月に住友商事を抜き、2015年6月には三井物産に追い付き、「三菱商事と商社2強時代に入った」ことを株主に強調した。
「2015年度に赤字決算となった財閥系商社は死に物狂いで巻き返してくるものと思われます。本当の勝負となる2016年度において、史上最高益となる3500億円の計画を着実に達成するとともに、業績だけでなく、将来性や社会に与える影響の大きさも含め、真の商社ナンバーワンとの評価をいただけるよう取り組んでまいります」(岡藤社長)と締めくくった。
一方、質疑応答では対照的に、株主から伊藤忠への苦言、激励など、様々な声が挙がり、丁々発止のやりとりとなった。トップバッターの株主からは、「さきほどから業績がいいとか、商社でトップなったとか、自慢話ばかり。他社は減損処理をやって、たまたま運がよくて、トップになったと思っています。あんまり喜びすぎて調子に乗ってもらっては困る。三菱商事、三井物産がなんやと、そんなあほな話はせんといてください。時価総額を上げるために、他社よりもこんな特徴ある経営をやるねん!というのを聞かせてください」と釘を刺した。
これに対し、指名された鉢村剛CFOは、「私ども役員一同も株を買っています。目線は株主様と同じで、高い配当もいただきたいし、株価を上げていきたい。一番大きなポイントは、持続的な成長をマーケットが理解できるかどうか。他の商社さんは資源系の構成が多く、資源を中心に大きくぶれる、日本の株価の影響もうける。そのために(商社全体の)株価が上がっていない。一方、伊藤忠商事は10%成長を前提にした利益計画を、マーケットに示している。地道に収益をあげて財務体質をきちっとしていくという行為で株価は上げていける」と応じ、会場からは拍手があがった。
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