伊藤忠はなぜ「異例」の長期政権を選んだのか 岡藤社長が「6年交代」の通例を覆した裏事情

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「6年周期」の通例を覆し、社長続投を決断した岡藤氏(撮影:今井康一)

異例の社長続投となった――。1月12日、伊藤忠商事の岡藤正広社長が今年4月以降も社長職を続投することが決まった。

同社では、先々代の丹羽宇一郎社長時代から、6年周期の社長交代が通例だった。就任6年目を迎えた岡藤社長も来期以降の進退が注目されていたが、自身が委員長を務める社長指名委員会で社長続投を決断した。

会社側は「経営課題にメドがつくまで」としており、今後の就任期間は未定。記者会見は予定していない。

「非資源ナンバーワン商社」を掲げていた伊藤忠は、資源価格の下落が続く中、長らく業界1位だった三菱商事と同2位の三井物産を抜き、2015年度の純利益額で総合商社1位に王手をかけている。昨年12月の東洋経済のインタビューでは「これ以上はない、最高の花道」と語っていた。

一方で「いつまでも権力にしがみついていると見られるのは絶対に嫌や。ぼくの美学が許さん」とも漏らしていた。自身の美学を曲げてまで続投を決断した背景には、ポスト岡藤体制が抱える2つの課題があるとみられる。

伊藤忠を取り巻く内憂外患

1つは、中国国有の複合企業CITIC(中国中信)との資本業務提携の行く末だ。伊藤忠は2015年、タイの華僑系財閥CPグループと共同でCITICへ合計1兆2000億円の巨額投資を行ったばかり。ただ、中国の腐敗撲滅運動を背景に、3社での協業案件の創出は当初の計画から遅れていた。

年に数回開かれる3社トップ会談では、CITICの常振明董事長、CPの謝国民会長ら、“アジアの巨人”たちと渡り合える伊藤忠側のトップが不可欠。岡藤社長退任後の人選がネックとなっていた。

2つ目の課題は、関連会社であるファミリーマートが今年9月に予定しているユニーとの経営統合だ。この案件はファミリーマート側が積極的に進めてきたが、岡藤社長は必ずしも前向きではなかった。

ファミリーマートに対する伊藤忠の出資比率が下がることや、流通業界の“勝ち組”であるコンビニと不振業態であるGMS(総合スーパー)が統合することに難色を示していた。当面は岡藤社長が両社の経営統合に対して目を光らせる必要がある、と判断したもようだ。

岡藤政権下で大躍進を遂げた伊藤忠。2つの課題を早期に片付け、さらなる飛躍につなげられるか。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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