三井物産は、もう「資源商社」だけじゃない 安永社長が「投資規律を徹底する」と明言
6月21日、総合商社大手5社の中でトップバッターとなった、三井物産の株主総会がグランドプリンスホテル新高輪(東京・港区)で開かれた。雨にも関わらず、来場者数は7587人と、2015年の6389人から増加。同ホテル内の2つの会場まで詰め掛けた。
株主からの質問・意見は、1人につき1つとされ、23問(昨年は17人で16問)。所要時間は1時間57分だった(同1時間41分)。内容は来場者への手土産の是非から女性取締役の数まで、多岐に及んだが、大半は資源価格低迷下での経営戦略や各事業分野の状況、株価・株主還元方針に関するものに集中した。途中、一部株主からは経営陣の責任を問う声も挙がったが、全体としては平静なやり取りで、剰余金の配当や定款の一部変更、取締役14人の選任の3つの議案は承認された。
経営陣と株主との質疑応答を通して、改めて焦点となったのは、業界で“資源商社”とも呼ばれる三井物産の強みと弱みだ。同業の中でも資源ビジネスに強く、最盛期には純利益の8割をエネルギー・金属事業で稼いできた三井物産。だが、原油や銅など商品市況の下落によって、前2016年3月期は期末に2844億円の減損損失を計上。純利益は834億円のマイナスと、初の連結最終赤字に転落したのである。
病院や農業、海外発電にも人・カネを投入
冒頭で安永竜夫社長は「多額の資源減損を計上したことを大変重く受け止めている。全社一丸となって、コスト削減と投資規律の徹底をはかり、収益力の底上げを目指す」と反省の弁と今後の方向性について語った。
競争力の高い鉄鉱石と原油・天然ガス事業の開発投資は継続するが、「資源への投資はより厳選してハードルを高くする」(安永社長)。アジアの病院事業や食料と農業、海外発電などに経営資源を集中し、エネルギー・金属以外の安定収益型事業の純利益を、現在の1400億円から2020年3月期までに2000億円へと積み上げる。具体的な人数は明らかにしていないが、資源部隊から人員を束にして移行する考えも話した。
とはいえ、こうした施策が効果を出すには、時間がかかる。今2017年3月期は減損が一巡し黒字転換する計画ながら、原油安のタイムラグによる事業への影響などを受けて純利益予想は2000億円と、商品市況が高騰していた2014年3月期の半分程度の水準だ。同社が経営指標として重視している基礎営業キャッシュフローも、前期の4700億円から今期3600億円まで縮小する見込み。つれて株主還元も、前期の通期64円配当から、今期は50円配当へ引き下げる。
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