三井物産は、もう「資源商社」だけじゃない 安永社長が「投資規律を徹底する」と明言

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株主からは「昨年来からずっと株価が下降トレンドで、三菱商事の方がしっかりしている」と、低水準な株価やROE(株主資本利益率)に対する考え方を聞きたいという声や、「(来期に策定する)中期経営計画の原油価格の見通しはどのように見ている」と、先行きの不透明感を問う質問が挙がった。一方で、「資源・エネルギー事業は物産のストロングポイントでもあるし、ひるまずにやっていただきたい」と、中長期目線で資源事業に期待する意見も出た。

また、苦戦が続く食料など生活産業事業に対する説明も、複数の株主から求められた。これに対して、赤字が続くブラジルの穀物事業であるマルチグレインについては、「有力パートナーを呼び込むなど、全社最重要課題として年度内に解決していく」(食料・流通事業本部の管掌役員である本坊吉博専務)と応じた。

さらに、子会社の三井食品で大きな取引を喪失したセブン-イレブン・ジャパンとのビジネスは、「過当な競争の中、厳しい条件を提示されて商売が減ったが、引き続きセブンーイレブンさんとの連携強化の方向は、いささかも変わっておりません。流通事業本部の成長戦略の柱とする」(本坊氏)と説明した。

商社同士での合併にはメリットなし

ほかにも株主からは様々な声が聞かれた。

「三井と住友は、銀行を中心としてずいぶん合併が進んでいるが、住友商事との合併にメリット、デメリットはないか」との質問が出ると、「コメントする立場にないが、あえて申し上げるとしたら、商社同志での合併にあまりメリットを感じることはありません。事業分野ごとに切り出すことで、住商さんと共同事業を行っているものもあり、領域ごとに是々非々で検討する」(安永社長)と回答している。

いずれにしても、初の連結最終赤字転落を受けて、厳しい空気だったのは間違いない。総会で株主から挙がった、得意な資源、苦手な非資源事業に対する不安を払拭できるか。就任2年目の安永社長は、「その時その時の事業のフォーカスをどこに当てるか。局面に応じて、機動的に人員・資金を動かせるということを、今後の商社の生業(なりわい)にしていきたい」とし、今後は事業体制の転換を急ぐ構えだ。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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