伊藤忠、岡藤社長が力説する商社トップの座 慢心に陥らないよう、苦言を呈する株主も

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ほかには、タイの華僑系財閥CPグループと共同で1.2兆円を投じた、中国国有の複合企業CITICへの投資に対する関心が高かった。株主からは、「岡藤さんはすばらしくやっていただいている。感謝を申し上げるとともに、株主としてうれしく思っている。そのうえで申し上げたいのは、勝って兜の緒を締めよ、と。中国で権力闘争が起きている中、国家資本のところ(CITIC)に6000億円の出資が減損に至るとしたらどう対応する」。「伊藤忠は資源ビジネスをやらないという話だったが、数日前、逆手を取って(CITICと共同で)資源をやる(覚書を締結した)というのは、どういうことなのか」と巨額投資の行く末を問う質問が相次いだ。

これにCP・CITIC室長を兼任する小関秀一専務は「十分に将来回収可能で、現状、減損リスクが高いとは考えていません」と回答。また、金属部門の担当役員である米倉英一専務は、「CITICと資源に関する投資を着々と進めているのは事実。具体的な話はできないが、各プレーヤーが資源で苦労している中、非常にいい条件で安い値段でいいものが買えるというのをCITICと進めていきたい」と説明した。

「他商社が死に物狂いで巻き返す2016年度が本当の勝負」と気を引き締めた岡藤社長(スクリーンの映像より。記者撮影)

また、世界中で事業を手掛ける総合商社にとって、円安から円高への転換は、全体的に業績へのマイナスインパクトが出る。総会中、まさに英国でEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票の開票作業が進む中、為替・株価への影響に関する質問も多く出た。これに対して岡本均専務は、「何とかとどまっていただきたい。離脱した場合、一時期的にかなりの円高となり、株価にも影響が出る。伊藤忠の体制を柔軟にして、対応していきたい」とコメントした(その後、英国のEU離脱が決定)。

大阪での総会開催にこだわり続ける

丸紅や住友商事も大阪発祥だが、今では毎年、大阪で株主総会を開くのは、伊藤忠が総合商社で唯一となった。今年は議長である岡藤社長が直接話すことは少なく、担当役員の回答が多かった。が、株主からの「御社は大阪なまりもあって出自は大阪、だが実質的には本社は青山(東京都港区)のほうにあると思うんですわ。社長さんは毎月どれぐらい大阪にいられるんでしょうか」という質問に対しては、岡藤社長自らが「私も社長になる前は大阪にいまして、今でも月に1回か2回は大阪に来ている。僕自身は大阪に対する思いが強い、これからも株主総会は大阪でやりたい」と答弁。会場からは拍手が湧き起こった。

最終的に4つの議案は承認。総会後、何人かの株主に話を聞いた。

「ずっと伊藤忠のファンで、がんばってくれているのは嬉しいけど、あんまり景気いいことを言われるとちょっとなあ」(62歳男性、大阪府)。「油断せずに今年はさらに株価で応えてもらいたい」(45歳男性、兵庫県)。トップ商社になったがゆえの風当りもあるだろうが、全体的に実績を評価する一方、伊藤忠の説明に”慢心”を感じた株主が多くいたのもまた事実だ。

毎年、大阪での定時株主総会を終えると、その足で京都の大谷本廟(西大谷墓地)にある、初代・2代伊藤忠兵衛の墓前に報告へ向かうという、岡藤社長。株主からの叱咤激励を受けて、今年はどんな思いで霊前に立ったのだろうか。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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