エネルギー資源価格の動向を大きく見誤ったのは、なにも大手商社ばかりではありません。石油元売り大手でも、原油価格がさらに下落するなどという情勢は予測していなかったのでしょう。
2016年3月期の決算では、最大手のJXホールディングスが2785億円の赤字(前期は2772億円の赤字)、コスモエネルギーホールディングスが502億円の赤字(前期は777億円の赤字)、出光興産が359億円の赤字(前期は359億円の赤字)となり、石油元売り大手3社は2014年度に続き2年連続の赤字となってしまいました。
2015年3月期の決算を発表する時点では、3社とも2016年3月期の黒字化を見込んでいたのですが、それは「原油価格はもうこれ以上は下がらないだろう」という甘い見通しに基づいてのものだったのでしょう。そして、その甘い見通しの根拠となったのは、当時の国際機関や民間シンクタンクなどの予測であったのではないでしょうか。
国際機関やシンクタンクの無難すぎる予測
というのも、もっとも知名度が高い国際機関であるIMFは、2015年3月時点の「商品価格の見通しとリスク(原題Commodity Price Outlook & Risks)」というレポートにおいて、その先1年間のWTI原油価格が50ドルから60ドルへと緩やかな右肩上がりで推移するという予測をしていたからです。また、大和総研でも2015年2月の「日本経済見通し(2015-2024年度)」というレポートのなかで、原油の想定価格を2015年が55ドル、2016年が60ドルとしていたのです。
結局のところ、原油価格のいっそうの下落によって、石油元売り大手3社では原油在庫のさらなる評価損が発生しただけでなく、海外油田への資源開発投資でも採算が悪化してしまいました。企業経営者やビジネスリーダーたちは、原油の需要と供給について自らでしっかり分析することなく、いつも当てにならない専門家任せにしてしまうから、そろいもそろって経営や投資に失敗してしまうというわけなのです。
国際機関やシンクタンクなどでは、経済や金融市場の動向については当たり障りのない無難な予測しか示されることはありません。保守的かつ横並びのような予測があまりにも多いため、ひとたび世界経済や金融市場のトレンドが変化すると、またたく間にそれらの予測はすべてが外れてしまうといえるものなのです。
次回は、経済や市場の流れを読み違えないために、経営者やビジネスリーダーたちが何をなすべきかについて述べたいと思います。
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