ただし、これは生存者バイアスが働いていることに注意が必要です。生存者バイアスとは競争や淘汰に生き残った人の意見が正しいものとして、前面に出ることをいいます。無茶ぶりを受けて苦しみ、失敗している人もその陰に、むしろ生存者より数多くいるでしょう。ひどい場合にはキャリアに大きく影響してきます。小さな無茶ぶりから、大きな無茶ぶりまでいろいろありますが、まずはどんな無茶ぶりがあるのかを見てみましょう。
その無茶ぶりはどこからきているのか?
まず無茶ぶりをする上司の立場から典型的なものをあげてみます。
① ノータッチでパスする無茶ぶり
本来は、仕事の目的や意味、優先順位を判断して、しかるべきメンバーにアサインするのがマネジメントの仕事。しかし、それをせずに、自部門に来た仕事の必要性をあまり吟味せずに部下にまる投げするというタイプの無茶ぶり、これがけっこうあります。緊急度、重要度、必然性などを判断しないため、突然「明日までにお願い」「なるはやで」など、仕事の期日設定に無理が多くなることがその特徴です。
外資系だと、直属の上司だけでなく、グローバルの本社からも指示がくることが多かったのですが、上司がボールを無条件でノータッチパスする人か、不要と判断すれば相手に投げ返してくれる人かで、当たり前ですがその下で働く人の“幸福度”はかなり違っていました。
② 慣行・カルチャーによる無茶ぶり
業務上、絶対に必要であるかどうかはあまり関係なく、「自分もこうされてきた」「これをさばけて一人前」「わが社の社風」として横行する無茶ぶりです。
管理職はその企業内での淘汰の中、生き残ってきた人であるため、生存者バイアスがかなり働いています。もちろん、一見無駄に思えることにもそれを通じて学び取ってほしいことがあるので、すべてが無駄というわけではありませんが、世代間ギャップも大きくなってきている今、この手の無茶ぶりはかなり受け入れられにくくなってきています。マネジメント個人ではなく、組織的にその無茶ぶりが肯定されているため、逃げ道が少なく、対応できないと「使えない人材」認定されやすいという特徴があります。
③ 成長を期待した無茶ぶり
期待する部下に対して、あえて能力を超える仕事にチャレンジさせて早く引っ張り上げることを目的としたもので、外資系では「ストレッチアサインメント」と呼ばれます。正確にいえば無茶ぶりではありませんが、振り方によっては本人が無茶と感じる可能性があります。
仕事やアサインメントの意味や期待を本人にきちんと伝えておかないと、仕事のプレッシャーや周囲からの反発などでつぶれてしまうリスクもあるため、どうサポートするかをあらかじめ決めておくことが多いのが特徴です。とりあえず「彼/彼女ならできそう」と難しい仕事を投げるだけでは、せっかくの優秀な人材を失うことになってしまうので、綿密に練られている必要があります。
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