仕事で悟れ!サラリーマン道 『十牛図』を見て己を取り戻そう

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第7 忘牛存人(牛は忘れて人が残った)

―牛のことをすっかり忘れて、自分だけがいる図

「自分はこれまでこの業界、この道一筋でやってきたけれど、考えてみれば、その道は何でもよかったのかもしれない。たまたま、わが人生のしばらくの間、その道を突き詰めることによって、自己と向き合うことをしてきただけなのではないか。仕事に、成功も失敗もありはしない。ただ、自分が自分であればいい」。あなたはふと、そんなことを思います。

第8 人牛倶忘(人も牛も共々忘れた)

―図には、何も描かれていない

「いや、仕事とか、自分とか、それも皆、過ぎたこと……」とばかりに、あなたは虚空を見つめます。心は鏡のように研ぎすまされています。

第9 返本還源(本源にかえる)

―人も牛もいない自然が描かれた図

あなたが見つめる視線の先には、美しい花々や青々とした木々の自然が広がっています。そこにはもはや、自己も他者もありません。価値観や目的も消え去っています。何も思うことのない清らかな心が、何もかもを包み込む宇宙と、ぴったりとひとつになっています。

 

第10 入てん垂手(ぶらりと町に出て、人と戯れる)

―布袋和尚がぶらりと手を垂れて町に出る図

隠居したと思われていたあなたが、久しぶりに町に姿を表しました。もはや、以前のような成功者の面影はありません。ぼろぼろの着物を来て、まるで世捨て人のような出で立ちで、ひたすらニコニコと、誰彼かまわず、人々に話しかけています。変わった人だと思われながらも、皆と笑い合い、感化させてしまう姿は、そのまま仏さまのようです。過去の仕事での苦労や成功は、きっとこの境地に至るための方便にすぎなかったのです。

どうでしょう。あなたは、今、どのステージにいますか?

松本 紹圭 光明寺 僧侶

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まつもと しょうけい / syoukei matsumoto

1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。蓮花寺佛教研究所研究員。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺の音楽会『誰そ彼』や、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。

ブルータス「真似のできない仕事術」、Tokyo Source「東京発、未来を面白くするクリエイター、31人」に取り上げられるなど、仏教界のトップランナーとして注目される。2010年、南インドのIndian School of BusinessでMBA取得。現在は東京光明寺(komyo.net)に活動の拠点を置く。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。全国各地で各宗派から意識の高い若手僧侶数十名が「お寺から日本を元気にする」志のもとに集結し、学びを深めている。

著書に『おぼうさん、はじめました。』(ダイヤモンド社)『"こころの静寂"を手に入れる37の方法』(すばる舎)『お坊さん革命』(講談社プラスアルファ新書)『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー21社)『脱「臆病」入門』(すばる舎)など。
 

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