ドミニカで“日本式野球”を布教する男 広島カープのアカデミーを直撃取材

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昨シーズン、育成選手として広島で過ごしたホセ・ポランコは、日本で貴重な経験を積んだ。

「日本の練習がハードというのは、正確な表現ではない。それは彼らの熱意なんだ。日本人はそうやって上達していく。俺もさらなる努力が必要だ。メカニック(フォームにおける一連の動作)をもっと上達させなければならない」

(撮影:龍フェルケル)

フェリシアーノはカープアカデミー時代、コーチの古沢憲司(今季から広島の1軍投手コーチ)にかけられた言葉が脳裏に刻み込まれている。

「一生懸命プレーしなければ、何も達成することはできない。努力した者だけが、いい選手になることができる。古沢さんにそう言われたことを、絶対に忘れない。ドミニカのコーチは、そんなことを教えてくれないからね。メンタルの話をされることなんてないし、活躍できなければ解雇されるだけ。いい選手になるためには、日本の野球の考え方が必要だ」

人間的に成長する必要性

努力しなければ、上達できない――。日本人にすれば当たり前のことが、外国では驚きとともに受け止められることもある。外国人の考える努力と、日本人の定義する努力の違いもあるだろう。

「人間的に成長できない者には、人生にさまざまな障害が待ち受けている。信頼して共にプレーするコーチ、選手を見つけることができなければ、練習でうまくなることはできない」

日本人コーチとの出会いで人生観が変わったフェリシアーノは、現在、母国のドミニカ人選手に日本流で教えながら、成長を促している。今年の秋季キャンプには4~5選手を広島に送り込める可能性があるという。

「皆さん、ドミニカからいい選手を送ります。頑張ります。お願いします!」

目を輝かせ、流暢な日本語でそう言ったフェリシアーノ。メジャーの眼鏡にかなわなかったドミニカ人選手たちは、日本式の練習でどこまで可能性を伸ばすことができるか。まずは、今年の秋が楽しみでならない。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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