ニコニコは「ネット民」と現実をつなぐ “熱”を生み出すコミュニティのつくり方

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本短期連載はこの<試食版>の流れを引き継いでいる。ニコ動を取り巻く世界観やニコ動が引き起こしている現象をどう見ればいいのか、またそれらの現象を、どのような切り口で見ると、ビジネスのヒントが見えてくるのかについて、書き進めていきたい。

VOCALOIDブームの本質とは

ニコ動の中では、マスメディアの中では決して盛り上がらない、実に狭い範囲のピーキーな話題で盛り上がり、大きなムーブメントが起きる場合がある。よく知られているのは、“初音ミク”のキャラクターで知られるVOCALOID(歌唱合成ソフトウエア)を中心としたコミュニティだ。

VOCALOIDのカルチャーを、単なるアニメソング好きの集まりと考えるのは早計だ。音楽好きが相互にコミュニケーションするための道具として、ニコ動とVOCALOIDが相乗効果をもって、コミュニティの情報交換速度を加速し、それまでになかったカルチャーを確立させていったのだ。

VOCALOIDカルチャーについて、そのコミュニティに属さない筆者が語るべきところではないが、音楽を作りたい、楽器を演奏したい、オリジナル楽曲を聴きたい、オリジナル楽曲の作者とコミュニケーションしたい。そんな、さまざまな音楽にまつわるニーズがつながり、VOCALOIDを中心とした“熱”を持つ、同じ価値観を共有できる仲間が集まる場としてニコ動が機能していることが重要な部分だ。

精神的マイノリティが生み出す局所的な“熱”

現実社会で自分自身が精神的マイノリティであることを自覚し始めてしまうと、その“気持ち”は封印されがちだ。他人と違うことは“悪いこと”ではないが、“よいこと”あるいは“優れていること”などと自信を持てるほど、ティーンエイジャーの頃から自分自身を簡単に確立できるものではない。

しかし、現実社会では同じ価値観を共有できる仲間が見つからなかったとしても、ネットを通じて周りの景色を眺めてみると、実はあちこちに精神的なつながりを持てる、話がきちんと通じる人がいることに気づける。

それゆえに、ニコ動は局所的な熱を生み出すのである。こうした手法は、実はさまざまなネットビジネスにおいて見られる。たとえばここ数年、大きなビジネスに成長した(と同時に社会問題にも発展した)ソーシャルゲームの仕組みも、同じ属性を持つ仲間を匿名で結び付け、同じ目的、同じ価値観を共有するグループのコミュニケーションを加速することで、ゲームを遊ぶモチベーションを高めていく。

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