ニコニコは「ネット民」と現実をつなぐ “熱”を生み出すコミュニティのつくり方

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ソーシャルゲームは、大人のゲームファンだけでなく、子どもたちまでをも巻き込み、さらにはネット文化から遠い位置にある父兄を巻き込んで社会問題化したが、コミュニティの温度上昇の手法については、参考にすべき点も少なくないのではないだろうか。

実社会ではつながらない、実社会では自分自身の考え方、感じ方が“普通じゃない”と落ち込むような状況でも、同じ価値観を持つ人たちを結び付ける。このことは決して悪いことではない。

ネットコミュニティ以外でも“熱”は生み出される

実際にもっと保守的な業界でも、ニコ動が作り出しているのと同様の熱密度の高いコミュニティを生み出して成功している事例がある。高級オーディオブランドのエソテリックである。

エソテリックは、先日、ギブソン傘下に入って多くのオーディオファン、楽器ファンを驚かせたティアックの子会社、サブブランドである。主に100万円前後の高級オーディオ機器を販売している。日本の高級オーディオメーカーとしては最後発に属するブランドだが、昨今は一貫して黒字を続けている。そればかりか、大手メーカーでさえさじを投げ、死に体になっていた次世代CD(SACD)を、国内で復活させるきっかけを作った。

なにしろ500枚売れれば御の字と言われる国内のクラシックCD市場で、エソテリックはコンスタントに4000~5000枚のセールスを記録し、すべてのタイトルで完全な黒字化を実現しているのだ。今ではエソテリックに倣い、ユニバーサルやワーナーなどの大手レーベルが、こぞって“エソテリック的”なSACDを企画、販売している。

その背景を見ると、そこには“ニコニコ的。”な世界と通じるビジネスの骨格が見えてくるのである。

次回に続く

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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