新電力に切り替えた人が2%しかいないワケ ヒットと不発を分ける「18のツボ」

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ところがこの「アクセシビリティ」、サービスの送り手(企業)側と受け手(生活者)側で、とらえ方に大きな差があることが少なくありません。

これは研究所メンバーの実話です。あるバイク乗りの愛機が最近マンションの駐輪場でホコリをかぶっている、というのでその理由を聞いてみると「少し前に駐輪場の再抽選があって、愛機を停める場所が以前より少し奥になってしまった」ことがわかりました。実際にはたかだか数十センチの移動だったようですが、毎回、微妙に出しにくさを感じていたのでしょう。このストレスが積もり積もって、本人も気付かない間にバイクに乗らなくなってしまっていたのです。

こうしたちょっとしたレベルの「アクセシビリティ」低下に送り手はもっと敏感になる必要があります。WEBサイトの設計で最近「ユーザー・インターフェース(UI)」「ユーザー・エクスペリエンス(UX)」が重要だ、と言われるのはまさに、この「アクセシビリティ」の問題。ちょっとしたボタンの位置のわかりにくさでも人は容易にサイトから離脱してしまうのです。

新電力の話に戻ると、切り替えがなかなか進まない要因の1つに「アクセシビリティ」の問題があるのではないか、と感じています。

そもそも聞き馴れない新電力会社は心理的な距離感が遠い。さらに、いざ切り替えようと思って、まず料金比較サイトで料金シミュレーションをしようとしたり、あるいは直接、新電力会社の申込みサイトに行ったりすると、大きな障壁が立ちはだかってきます。「契約種別(従量電灯Bなど)」「使用量」、申込時にはさらに「お客さま番号(契約番号:東京電力の場合は13桁)」と「供給地点特定番号(22桁)」の入力が必要になるのです。

その入力だけでもかなりのエネルギーコストですが、そもそもそうした番号情報がわからなくて挫折してしまう、という人も多いはず。

ちなみにこれらの情報はすべて、毎月電力会社からポストに届く検針票に記載されていますが、あの小さく薄い紙を毎月、丁寧に保管している人がどれだけいるでしょうか。契約電力会社に問い合わせれば教えてくれるそうですが、これもときどき電話がつながらなかったりと、いちいち「アクセシビリティ」が低いのです。

「アクセシビリティ」を再点検

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「人が思ったほど動かない」という悩みを抱えている企業やお店、WEBサイト運営者は「アクセシビリティ」に問題はないかをもう一度点検してみるといいと思います。さらに「価格戦略」についても再検討の余地があるかもしれません。

必ずしも価格を下げるだけが人を動かす早道ではありません。ワンコインや定額、後払い(キャッシュレス)などの「買いやすさ、払いやすさ」も「アクセシビリティ」の向上につながります。価格を下げなくても時間や距離の利便性向上で十分戦える場面もあるはずです。

國田 圭作 博報堂行動デザイン研究所所長

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くにた けいさく

博報堂行動デザイン研究所所長。1959年生まれ、1982年東京大学文学部卒業後、博報堂に入社。以来、一貫してプロモーションの実務と研究に従事。2013年より現職。大手ビールメーカー、大手自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などのブランドマーケティング、商品開発、流通開発などのプロジェクトを手掛ける。2006年に行われた第53回カンヌ国際広告祭の部門賞(プロモライオン)で審査員を務める。

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