車を売らないショールームに人が集まるワケ ベンツは試乗、マツダは開発者と会話できる
「初めて生で見たけどすごい」
最高地点9メートル、最大で約45度に傾いた仮設の勾配をSUV(スポーツ多目的車)がするすると駆け上っていくと、即興のギャラリーと化した通行人からは興奮した声が上がった。東京の六本木にメルセデス・ベンツ日本(MBJ)が設けた、ブランド発信施設で行われているSUVの試乗イベント。誕生を1979年に遡るメルセデスの伝統的なSUV「G550」(1470万円)が、ミッドタウンに向かって空中で制止している様子は見る者を圧倒する。
今、自動車メーカーの間では、車を売ることを直接の目的としない施設を作ったり、イベントを行ったりする動きが活発になってきている。
すでに1500名がベンツのSUVを体験
MBJは2011年にレストランとカフェ併設のショールーム「メルセデス・ベンツ コネクション」を設けた。それを今年2月上旬に拡張させ、オープンさせたのが「ネクストドア」だ。オープンと同時に始まったのが様々な悪路をSUVで体験する無料のイベントだ。5月初旬までの期間限定で、でこぼこした岩場や岩山、急峻な山をイメージした3つのアトラクションが楽しめる。1日30組の枠は土日を中心にほぼ埋まるほどの盛況ぶり。既に1500名が体験した。
平日の午後、一人で参加した都内在住の46歳の男性会社員は「メルセデスの車の剛性の強さや技術力の高さを実感した。乗ってしまうと欲しくなってしまう」と体験を終えると顔をほころばせた。今は富士重工業のSUV「フォレスター」に乗っているが、以前セダンで乗ったことのあるメルセデスのSUVにも関心があって申し込んだという。「商談抜きなので、気兼ねなくいろんなことを聞けて良かった」と満足げだ。
MBJは2016年を「SUVイヤー」と位置付けており、体感イベントもその一環だ。イベントの責任者を務めるカスタマー・エクスペリエンス部の小口泰史マネージャーは、「お客さんにとっては直接体験が一番印象に残る。メルセデスのSUVの魅力を深く体験して頂こうと始めたが、想像以上に好評だ」と手応えを感じている。
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