ベンツ「スマート」4人乗り復活が示す転身 MINIに倣い、コンセプトからブランドへ
2015年秋の第44回東京モーターショーで国内発表されたダイムラー・グループの新型「スマート」は、従来から存在する2人乗りのフォーツーだけでなく、4人乗りのフォーフォーも用意している。
主力と位置づけられたフォーフォー
しかも昨年10月に発売されたフォーツーが限定440台の特別仕様車扱いなのに対し、今年1月に発売されたフォーフォーは通常のカタログモデルとしており、輸入・販売元のメルセデス・ベンツ日本はこちらを主力と位置づけている。
それを立証するように、先日発表された日本自動車輸入組合発表の1月の車名別輸入車新規登録台数で、スマートは堂々ベスト10に入った。470台という数字は、フォーフォーが存在しなかった前年同月の約13倍であり、2015年1年分の半分近くを、たった1カ月で稼いでしまった。人気アイドルグループ「嵐」の相葉雅紀さんがテレビCMのキャラクターを務めており、「あの車か」と思い浮かぶ人も少なくないだろう。
そのスマートはもともと都市交通をスムーズにするために、全長の短い2人乗りとして生まれたはずだ。それがなぜ4人乗りを主力としたのか。それは、このブランドがかつて歩んできた、いばらの道によるところが大きい。
スマートの源流は2つある。ひとつが時計のスウォッチ・グループ(発表当時はSMHグループ)、もうひとつがダイムラー(当時はダイムラー・ベンツ)だ。スマートという名前は「Swatch Mercedes ART=SMART」の略だった。
ダイムラーでは1970年代から2人乗りの超小型車の研究を進めていた。同様のコンセプトはほかの自動車メーカーも考えていた。しかしいずれもリスクを恐れ、製品化には至らなかった。
一方、スウォッチ・グループの創始者ニコラス・G・ハイエックは、コンサルタントとしてスウォッチを発明し、時計産業に参入したという経緯もあり、他業種への進出を考えていた。そのひとつが自動車だった。
彼が考えていたのは、スウォッチのようなポップなデザインをまとう、2人乗りの超小型車。ハイエックはいくつかのメーカーに売り込みを図ったところ、ダイムラーと意気投合。1994年に共同出資でMCC(マイクロ・コンパクト・カー)という会社を設立する。スマートはダイムラー・クライスラーが発足した1998年に市販型が発表され、2年後には日本にも輸入された。
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