ベンツ「スマート」4人乗り復活が示す転身 MINIに倣い、コンセプトからブランドへ

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「プロジェクト・エジソン」と名付けられた共同開発の現場を、筆者は一度だけ見たことがある。数年前、ルノーの研究施設に行ったところ、敷地内にスマートの改造車が止めてあり、エンジニアに「次期トゥインゴ?」と聞いたら笑みを返してきたのだ。

ちなみにそのスマート、派手なオーバーフェンダーを装着し、全幅を拡大していた。当時は理由がわからなかったが、新型を見て納得した。新型はフォーツーとフォーフォーの全幅が同一になったのだ。リアエンジンであることも共通であり、部品の共用化を推進できた。

さらにルノーは日産同様、電気自動車にも力を入れており、日産を上回る4車種を販売している。新型スマートの電気自動車はこれらの車両が使うモーターを積む予定と言われており、ここでもコストダウンが期待できる。

コンセプトからブランドへ

2015年11月に埼玉県で行われたスマートの報道関係者向け試乗会。フォーフォーは発売前だったので、ドライブできたのはフォーツーだけだったが、走り出してすぐに協業の成果が確認できた。

全幅が広くなると、転倒の危険性が少なくなり、安定性で有利になる。サスペンションの設計にも余裕が生まれる。つまりハンドリングと快適性をともに向上できる。新型スマートはその特性を生かしきっていた。従来型の欠点だった乗り心地の硬さやコーナーでの不安定感が解消されていた。

この走りに、カングーのように背が高くても乗り心地のよいクルマを開発できるルノーのノウハウが生かされたかはわからないが、都市内移動というコンセプトに見合った乗り心地を、3代目にしてようやく獲得できていた。ホイールベースの長い4人乗りのフォーフォーはさらに快適に仕上がっているだろう。

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コンパクトながら快適な車内

その代わりコンパクトネスという点では一歩後退したものの、ダイムラーはミニ(BMW MINI)の成功を見て、考えを変えたのではないかと想像している。ミニもスマートも、初代は独創的な技術を投入することで、最小限のボディに2人あるいは4人の大人を収容したコンセプトが革新的だった。しかし現在のミニは全幅については3ナンバーであり、サイズで見ればミニではない。デザインや走り味でミニらしさを演出するというブランディングに転換している。

スマートもボディは従来から大型化したうえにフォーフォーの復活もあり、その点ではスマートと言い難くなった。しかしリアエンジンや、トリディオンセーフティセルと呼ばれる強固なボディ構造は継承することで、スマートらしさをアピールしている。スマートはコンセプトからブランドになったのである。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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