車を売らないショールームに人が集まるワケ ベンツは試乗、マツダは開発者と会話できる

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ショールームには広島のマツダ本社で3日間研修を受けたという3名の専属スタッフが常駐。地元のディーラーから経験豊富な社員が抜擢されたが、営業トークをすることはない。「作り手の思いや開発のエピソードといった、カタログに載っていない情報をお客さんは求めているのではないか」(正司喜昭マネージャー)という考えから、研修で聞いた開発や生産現場の社員の話を来場者との会話に活かしている。週末には開発者やデザイナーのトークイベントも開き、直接消費者と接する場を能動的に設けている。

直営ショールームは現在大阪のみ。東京でのショールーム設置は計画していないが、販売会社の店舗改装費用を補助することで、今回新設したショールームのような機能を持たせている。また、各地域の販売会社の社員に順次、本社で研修を受けてもらい、「走る歓び」と「優れた環境安全性能」を顧客に提供することを目指すマツダの車作りの考え方を浸透させようとしている。

イベントに開発者7人を派遣

3月に佐賀県鳥栖市で開催されたマツダのイベント

出張型のイベントも各地で開催。佐賀県鳥栖市で3月の週末にアウトレットで行ったイベントには車両12台と開発者7人を派遣。開発者は展示車の横で買い物客と気さくに会話に応じていた。また、正しい運転姿勢を実現するための車作りについて開発者自らが話したり、開発者の同乗で試乗体験をしたりした。試乗体験にはインターネットで申し込んだ24組が参加したが、倍率は6倍に達したという。

今は他社の車に乗っているという50代の女性は「開発者と直接話をしたのは初めて。真面目に車作りをしているのが伝わってきた。マツダ車の購入を真剣に検討してみたい」と話し、イベント効果はてきめんだ。

国内営業を担当する福原和幸常務執行役員は「国内シェア約5%の裏返しで95%の人は我々の車を使っていない。まずは一人でも多くの人にマツダのブランドを知ってもらいたい」とブランドの発信活動を地道に続ける考えだ。

メルセデス・ベンツ日本とマツダの取り組みは相応のコストがかかり、またすぐに販売増という結果に結びつくものではない。しかしながら、ブランドや商品をきちんと理解をしてもらった上でユーザーになってもらえれば、ブランドに対するロイヤルティ(忠誠心)も高く、同じブランドでの乗り換えも期待できる。販売環境が厳しい今だからこそ、逆転の発想が必要なのかもしれない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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