新電力に切り替えた人が2%しかいないワケ ヒットと不発を分ける「18のツボ」
毎年、年末になると「来年のヒット予測」が各方面から発表されます。昨年末にある雑誌が予測した2016年のヒット第1位は「電力小売り自由化」関連サービスでした。今年4月から一斉に新電力への切り替えがスタートしましたが、結果的に新電力に切り替えた世帯は7月時点でたったの2%にとどまっています(電気新聞7月11日報道)。
しかしそのちょうど1年前の調査では、なんと95.4%の人が電力小売り自由化後に「電力会社を変更する可能性がある」と回答していました(出典:プライスウォーターハウスクーパース株式会社「電力小売市場意識調査結果2015」/調査時期:2015年8月)。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
「安さ」だけでは人は動かない
実は、事前調査で“行動意向”が高くても、実際に行動する人はそれほど多くないことはよくあります。そこには人の「リスク感」という感情が潜んでいます。人は、新しい行動を採用するときだけでなく、“今、している行動”を変えることにもリスクを感じるものですが、そのリスク感は送り手(企業)側が思っている以上に強いことがあるのです。特にライフラインのような生活インフラに関しては、なおさらです。
多くの人は「価格が行動の最大の障壁であり、安くすれば人は行動に移すものだ」と考えがちです。先ほどの調査でも、10%の割引率で30.1%、15%の割引率では43.0%もの人が切り替えを検討すると回答しています。しかし現在までの新電力への切り替え状況からは、「安さ」だけで人は動かない、という事実が見えてきます。
逆に、早々と切り替えた人は「リスク感度」の低い人である、と見ることもできます。米国の社会学者エべレット・ロジャースが提唱した「イノベーションの普及曲線」で、真っ先に新しいモノ・コトを採用する“イノベーター層”の比率は2.5%とされています。この比率が直近の新電力切り替え率と近い数字になっているのは偶然ではないと思います。
このように、リスク感度が低いのはごくごく一部の層ですが、「リスク感」をうまくコントロールできれば、人が行動に踏み切る率は大きく上昇するとも言えます。
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