新電力に切り替えた人が2%しかいないワケ ヒットと不発を分ける「18のツボ」

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「お膳立てのツボ」も、“行動ブレーキ”を緩和するのに役立ちます。最近、各社から「フルーツ入りグラノーラ」(ドライフルーツやナッツ類を混合したシリアル商品の総称)が発売され、人気を博していますが、最初のうちは健康意識の高いごく一部の層が支える市場でした。ところが誰かが朝のヨーグルトにトッピングとしてシリアルをかけて食べる、という食べ方を始め、それが広く普及したことで市場がブレイクした、と言われています。

シリアルを朝食の主食にするのは、馴染みのない人にとっては意外に勇気がいる行動。でも、いつも食べているヨーグルトのトッピングとしての利用なら、あまり抵抗がない。このように「いつもしている馴染みの行動」のうえに「ちょっと抵抗のある新規の行動」をお膳立てする。ちょっとした「お膳立て」の有無で、人の行動は大きく左右されるのです。

見逃されがちな「アクセシビリティ」

「現場がやってくるツボ」というものもあります。昨年、東京都民全世帯に配布された黄色い防災本、「東京防災」はその活用例といえるでしょう。

わざわざ防災マニュアルを買いにいくのは面倒だけど、向こうからやってくるのならば受け入れる、という人は少なくないでしょう。

ここにはエネルギーコスト意識が働いています。「面倒くさがる」のは、リターンへの期待がそれほど高くない行動に対しては余計なエネルギーコストを支出したくないからです。リスクも、結果的に余計なエネルギーコスト支出につながります。人が極力リスクを回避しようとするのは、そのためです。

ここで重要となるキーワードの1つが「アクセシビリティ」。直訳すると“接近容易性”というような意味ですが、実はそこには空間的な距離(近さ)以外にもさまざまな要因が含まれているのです。

たとえば「いつでも好きなときに使える」(時間要素)、さらに「値段が安く買いやすい」(価格要素)なども「アクセシビリティ」の一要素。金銭的なコスト(価格の高い・安い)は距離的な近さと別物ではないかと思われたかもしれませんが、我々研究所の自主調査で「距離と時間、そして価格という異なる要因が、生活者の中では同じような価値として一括りにされている」ことがわかっています。つまり「アクセシビリティ」は人が支出するトータルコストをどれだけ抑えられているか、という生活者側の総合評価なのです。

「アクセシビリティ」が高い、ということはリスクが少ない、ということでもあります。物理的距離だけでなく心理的な距離感もリスクとつながっています。「見馴れない人やモノ」に対して、ふつう人は高いリスク感を抱きますよね。逆に「テレビでお馴染み」の芸能人やブランドには人は親近感を感じます。繰り返し目にすることによって親近感も好意も高まることが心理学の研究でわかっています(単純接触効果)。つまり心理的な距離感を近づけることで「アクセシビリティ」が向上するのです。

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