ぜいたく禁止令で消費不振に陥った中国 共産党指導部による綱紀粛正の強化で広がる波紋

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綱紀粛正がもたらした実体経済への影響はそれだけではとどまらない。贈答品や接待が禁止されたことで、地方政府や国有企業の資材や事務機器、備品、什器などの発注担当者が、とりあえず様子見を決め込んだ。今回の無駄遣い禁止令が一過性のものだとすれば、このタイミングでの発注は、それこそ既得権の「無駄遣い」になってしまう可能性があるためだ。

オフィスのコピー機械が壊れて現場から悲鳴が上がっても知らんぷりで、出入りの業者が以前のように「正常」に戻るのをひたすら待っているような官僚も少なくないという。もちろん、あまりに見え透いたことをすれば進退にかかわるため、最低限の発注は出してはいる。それでも冒頭に述べた景気回復の遅れにつながっている面があることも、誰も否定できないだろう。

窮地を救った習近平夫人、彭麗媛氏

こうした綱紀粛正(自主規制も含まれよう)で沈鬱な空気が流れる中、一服の清涼剤となったのがファーストレディ効果。習近平主席夫人の彭麗媛が3月末の初めての外遊時に国産ブランドの衣服を身にまとっていたことで、上海株式市場では関連銘柄が買い上げられた。

ブランドは広州市の「例外」(EXCEPTION de MIXMIND、未上場)。価格帯は女性用スーツが一着7000~1万人民元(10万~15万円)と決して安くはないが、それでも欧米ブランドと比べれば雲泥の差がある。写真が公表された翌日の本土株式市場では、ハイエンド婦人服のLANCY朗姿(002612・CH)がストップ高、皮革ジャケット専門メーカーのKAISER凱撒(002425・CH)が3%超も買われたほか、大楊創世(600233・CH)など国産男性用ブランドアパレル関連もツレ高となった。

大楊創世は習近平が今回外遊時に着用したスーツメーカーと言われる。残念ながら、LANCYの上昇は一過性にとどまったが、KAISARと大楊創世は中国株相場が上値の重い中、4月中旬に入っても強含み基調を維持している。現地の専門家は、これまでの欧米を中心とした舶来ブランド信仰が後退するひとつのきっかけになるかもしれないと、好意的な見方を抱いてるものも少なくない。

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