ぜいたく禁止令で消費不振に陥った中国 共産党指導部による綱紀粛正の強化で広がる波紋

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綱紀粛正・ぜいたく禁止令でメリットを享受している業界にはカラーテレビも入りそうだ。今年の第1四半期のカラーテレビ販売台数は前年同期比43%増の1238.6万台、売上高は39%増の416.3億元と急増している。香港上場のスカイワース(751・HK)やTCLマルチメディア(1070・HK)などが4月に入っても右肩上がり基調を維持して、年初来高値を更新し続けている。宴会が禁止されて外出機会が減れば、自宅でおとなしくテレビやビデオ鑑賞でも、ということか。50インチが占める割合が2012年1~3月期の6.7%から、今年の1~3月期は11.5%に急増していることから、都市部での販売増が鮮明になっているといえよう。

スポーツ関連銘柄が好調

意外なところでこれから期待できるのが、スポーツ関連かもしれない。中国の国有企業のトップビジネスマンに趣味を尋ねると、真顔で「ハイキング」や「山登り」と答える者が多い。実際には中国各地で多くのゴルフ場が法律の抜け道を探して建設されていると伝えられるが、公式的には2004年からゴルフ場建設は違法となっている。本当はゴルフが好きでも公の席ではそう答えられない。とはいえ、当面はゴルフを避ける幹部や官僚が増えるのはほぼ確実。さらに、夜中の宴会が減れば、本当にハイキングやトレーニングジムなどの関連商品の需要が高まるとみられる。

そんな中、香港市場ではスポーツウエア銘柄の値動きがしっかりしてきた。業界全体を取り巻く環境としては、ユニクロやH&Gなど海外ブランドの上陸とシェア拡大、2008年の北京オリンピックにあやかって大量出店した反動による数年にわたる在庫激増の反動――など決して楽観的になれるような状況ではない。ただ、大手スポーツウエアの安踏(2020・HK)や中堅の361°(1361・HK)といった銘柄の今年に入ってからの値動きは相場全体が下落トレンド入りした中でも、むしろ堅調に推移している。

こうしたスポーツがらみでメリットを受けるものとして、実は台湾の有力企業も挙げられる。ジャイアントの英語名で知られる世界最大手の自転車メーカーである巨大機械(9921・TT)や追随する後発の美利達(9914・TT)などの値動きはまさに右肩上がり。年初から巨大機械は約10%、美利達は約40%も上昇している。美利達の強さは、スポーツ用マウンテンバイクや競技用自転車の需要の高まりを背景に、売上高に占める中国比率が今年40%を突破するとみられることが市場で好感されているようだ。

日本の投資家にとって残念なのは、上述した中国高級アパレルブランドのほとんどが本土A株銘柄で、日本からの直接投資ができないことだ。中国側の市場開放の加速が待たれる。また、台湾企業についても日本の証券会社で取り扱っているところはまだ多くない。とはいえ、日本企業の間でも、こうした綱紀粛正やぜいたく禁止令を逆手にとってビジネス機会に転じるところも現れる可能性も十分にあると考える。
 

西胤 智 岡三証券アジア室参事

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にしつぐ さとし

にしつぐ さとし 1986年国際証券に入社。香港、台湾法人出向などを経て、94年上海事務所長。97年台湾法人代表・事務所所長。合併後、三菱証券エクイティ営業部や投資情報部で活躍後、07年岡三証券入社。現在、岡三証券アジア室参事

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