これらの背景を認識しながら、2016年版の本書の新たな試みとして、中核市を対象に、基礎自治体の特性を踏まえた指標の取捨選択と追加を行い、基本指標と5分野(健康、文化、仕事、生活、教育)・10領域、計39指標について客観的に分析、ランキングを行った。
なお、取得できるデータのうち、一部(7指標)について2013年度(平成25年度)が最新の指標にあたることから、2014年度(平成26年度)以降に中核市に移行した枚方市、越谷市、八王子市、呉市、佐世保市を除く42市を今回のランキングの対象とした。
全39指標の総合ランキングでは、対象の中核市42市中、豊田市が1位になった。基本指標、仕事分野、教育分野の1位が、総合順位1位に大きく貢献している。とりわけ仕事分野の雇用領域と企業領域において、ほぼすべての指標が上位一桁台になったのは注目すべきで、自動車産業という強固な産業基盤の実体を的確に表していると言える。
2位は長野市であった。健康分野で1位、仕事分野で3位になったことから、健康に留意しながら、男女問わず、幅広い年齢層が働くことのできる環境が整えられていることがうかがえる。都道府県幸福度ランキング4位の長野県と同様の傾向である。
3位は高崎市であった。どの分野もバランスよく上位に位置し、文化分野の「『学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動』を行うNPO認証数」の1位に、地域住民が積極的に社会的課題を共有し、参画しながら解決へ向かう問題意識の高さが表れている。
中核市の総合ランキングは、仕事分野との相関性が政令指定都市以上に強く、大都市を基点とする広域経済活動がランキング結果に色濃く影響を及ぼしている。中でも、我が国の基幹産業である自動車産業や、今後成長が見込まれる航空宇宙産業は裾野が広く、経済的にも技術的にもほかの地域や産業への波及効果が高い。上位5位の中に東海地方の豊田市と岡崎市が入ったことは、その特長が顕著に表れたと言える。
また、地理的な分布状況を見てみると、中部地方と関東地方の中核市が上位に多く、都道府県や政令指定都市の幸福度ランキング結果と同じような傾向が見受けられる。