実は、私も新人時代に母が会社に電話してきたことがあるんです。1年だけ実家から通勤していたのですが、連絡もろくにせずに、会社に泊まったり飲み歩いたりしていたので、さすがに安否確認をしたくなったみたいです。私宛てにかけた電話でしたが、たまたま女性の上司が出て、母が上司と私を間違えて、「生きてたのね」と言ったそう。母は上司だとわかってかなり恐縮し、かわいそうな思いをさせてしまいました。上司からは「親に要らない心配させるなんて、大人としてどうか」とこっぴどく叱られ、その後で、「すごく素敵なお母さまね」と笑われました。
私自身は母に対して「社会人なんだからほっといてよ」と思ったりもしたのですが、客観的にみると、「人としてどうか」の問題ですよね。そういう意味で恥ずかしくなったことを思い出します。でも、この事件以降、私は家でもよく上司のことを話すようになったんですよ。
あなたのお父様はあなたのことが心配でたまらなかったのでしょうね。もしかしたら、あなたがひとりで頑張りすぎてしまうタイプで、体が心配で様子が知りたかったのかもしれません。また、あなたが家でたくさん愚痴を言っていたのを重く受け止めていたのかもしれません。あなたが自覚していないあなたの心や体の叫びを代弁してくれたのかも。だから、上司や会社は、お父様からの電話を単なる「すごい剣幕のクレーム」とだけ受け止めたりせずに、あなたの働きぶりを再確認し、気づいていないリスクを改善する責任があるのです。もっと言うと、そうした現状に気づいていなかった自分たちに責任を感じるべきです。
見直してもらうよいチャンス
あなたは、懸命に仕事を覚えようとし、長時間労働も是としているのかもしれないけれど、上司や先輩の指導の仕方、仕事の与え方、時間管理のあり方を見直してもらうよいチャンスだととらえればいいのですよ。大変なことになる前に、シグナルがあったのだと、ちゃんとした会社なら思ってくれるはずです。
「父はとても心配性で。お仕事中に申し訳ありませんでした」「父はまだ現役で会社勤めをしているので、自分の会社と比較しているみたいです」などと上司と会話してみるといいかもしれません。もし、そのとき「お父様はこんなことを心配されていたけれど、具体的にはどうなの?」としっかり話をしてくれないなら、お父様の心配どおりの会社である可能性もあります。人事やほかの上司などにもさりげなく相談してみるのもいいかもしれないですね。
そして、お父様を責めないであげてください。心配させた自分にも問題があったかも、と思えれば大人として成長している証拠です。「なんであんなことしたのよ!恥かいたでしょ!」などと言わず、「お父さん、会社に電話してくれたんだって?心配かけてごめんね」と言って、どんなことを心配してくれていたか聞いてみる。「愚痴ばかり言ってたから心配かけちゃったけど、こんなこともあるんだよ」と仕事上での嬉しかった出来事や、できるようになったことなどを話してみたらいいのではないでしょうか。お父様もきっと、冷静に心配事を伝えてくれ、そして、上司への電話についても「あれはちょっとまずかったかも」と思ってくれるのではないでしょうか。
家族ほど、いつまでもあなたの応援をしてくれる味方はいないのです。岐路に立った時に、あなたをいちばんよく知っていて、相談に乗ってくれたり知恵をくれたりする大事なアドバイザーでいてもらいたいですよね。どうか「家も会社も居心地が悪くて嫌になった」なんて思わずに、「心配して応援してくれる人たちに囲まれている」と少しでも前向きにとらえて、あなたなりの対応を考えてみてほしいなと思います。応援しています!
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