でも、こういうことは昔からあったことなのです。「よくある」とまでは言わないですが、少なくとも身近で見聞きしたこともありますし、対応している人と話したこともあります。かつては、女性社員の親御さんからが多かったものですが、今は男女問わずあるようです。「結婚したら専業主婦になるのが一般的」と考えられていた時代には、「娘さんをお預かりする」といった感覚もあったそうですし、男女関係なく働く時代になったらなったで、親御さんには別の心配事も増えていったのでしょう。
確かに、風邪などの病欠や遅刻の連絡を親御さんから受けたりすれば、私が上司でも「大きな病気でないなら自分で電話くらいできるだろう」と呆れてしまうかもしれません。また、配属先の職種や転勤のエリアが不満だと言ってくる親御さんもいるそうなので、「そこまで親に説明しなくてはいけないの?」とうんざりした気持ちになってしまう可能性はあります。本人はいたって常識的な人だけれど、ちょっと変わっているお父さん、お母さんがいらっしゃることもままありますから、電話をかけてきたお父様の話を「すごい剣幕」と受け取ってしまったら、上司が驚くのも理解はできます。
けれど、それが直接的な理由で、職場からの評価が下がったり、仕事に影響が出たりすることはまれですから、まずは「どうしよう」と動揺しすぎないことです。
親もドキドキハラハラしている
私は成人の子どもはいませんが、子を持つ親ではあります。自分の子どもが就職したらと想像すると、「ハイ、一丁あがり!」とはきっと思えないだろうと思います。特に仕事を選ぶときに、いろいろと相談を受けたりアドバイスをした場合は、社会人になりたての頃は、ドキドキハラハラして見守るかもなぁとも思います。
就職について、最終的には子どもが自分で決めたとしても、親や家族の意向が影響することはよくあるので、ある種の責任を感じてしまうのです。会社に電話してクレームめいたことを言うことの是非はともかく、親はいつまでたっても親なのだし、ずっと心配はしているものではないでしょうか。
一方で、振り返ってみると、私は、部下に新入社員が配属された時に、「一人前のオトナ」とは思わず「過渡期の人」として扱ってきた記憶があります。社会人として独り立ちするために、仕事だけではなく生活面なども細々と目配りしていました。うるさいお母ちゃん上司だったかも。でも、周囲にも、「朝ごはん、食べた?」とか「顔色が悪いけど、ちゃんと寝てる?」とか声をかけている人たちがたくさんいたようにも思います。厳しく特訓し、修行させているように見えても、家族も会社も、ひとりのぴかぴかの新入社員がしっかり育ってほしいと思っていることは確かなのです。
この頃は、会社説明会や内定式、入社式に親御さんを招いて、ご両親にも安心して入社してもらおう、という会社もたくさんあります。私が就職した20数年前だって、内定式で、保護者向けの会社案内パンフレットをもらいましたよ。家族や身近な人たちにも、選択してもらえ、応援してもらえる企業でありたい、と考えるのは、私には過保護過ぎるとは思えません。親御さんが会社でのわが子の様子が気になることも「非常識」だとは思いません。だから、あなたは必要以上に会社や上司に罪悪感を感じたり、ご両親を恥ずかしいなどと思わなくてよい、と私は思います。
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