労働者の楽園、北九州「角打ち通り」の吸引力 マツコも「残したい」、貴重な酒場の数々
おでんのダイコン50円、レンコンの串揚げも50円。値段は昭和から据え置き。かつて銀幕スター高倉健さん(享年83)も歩いたJR折尾駅(北九州市八幡西区)そばの堀川沿いの通りには、30ほどの角打ちや小料理屋が並ぶ。
「鉄都」として栄えた街だけあって、労働者の疲れを癒やす酒場がちらほら。ここもその一角だ。そんな“オアシス”を、4人の経営者が歩いた。一息入れたい思いに労使は関係ない。ここでの肩書はみんな左党である。
マツコも「残したい」酒店
平日の午後4時半。折尾駅東口に、中小企業の社長たちが集まった。いずれも本拠は福岡市。同じ経営者団体のメンバーだ。当然、飲み屋の看板はまだどこも明かりがついていない。取材と称して同行したものの、真っ昼間から飲みに行くと思うと、やはり後ろめたい。
通りを下校する高校生が行き交う。約600メートル離れた東筑高校の生徒たち。健さんの後輩である。隣町(福岡県中間市)出身の健さんは、駅を利用し、川沿いのこの通りを歩いて通学した。
案内役は4人の社長のうち、コールセンターを経営する島田昭規さん(52)。自宅が近く「ここの魅力を伝えたい」と今回のツアーを企画した。
最初に向かったのは、有名な「高橋酒店」。最近、マツコデラックスのテレビ番組で「新3大・後世に残したい角打ち酒屋」と紹介され、注目されている。