「ヤシノミ洗剤」46年続くロングセラーの秘訣 巨大企業と戦う「小さな会社」のブランド戦略

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このとき、商品への信用をいただくことこそが、ブランド力のベースなのだと、改めて思い知りました。「コンセプトを守り続けてよかった」と……。

ブランド力の3つめの理由は、私たちの企業理念を積極的に発信したことです。

2004年にヤシノミ洗剤は、再び存亡の危機に立たされました。あろうことか、「環境破壊」の疑惑をもたれたのです。ヤシノミ洗剤は1984年ころに、より環境に優しくという理由で原料をヤシ油からパーム核油に変えていますが、後にあだとなりました。パーム核油を採るアブラヤシを育てるボルネオのプランテーションで乱開発が行われており、熱帯雨林の環境破壊が問題となったのです。

テレビ朝日系列がこの問題を取り上げたとき、原料としてパーム核油を使っている多くの企業のひとつとしてサラヤもコメントを求められました。ほかの企業がどこも取材を拒否するなか、私だけは正直に「環境破壊の事実を知らなかった」と番組にコメントしたのですが、放映後に批判が集中し、売り上げが落ちました。

直後から、サラヤは積極的にボルネオの環境破壊の阻止に動きました。国際的な機関に参加し、ヤシノミ洗剤の売り上げの1%でこの運動を支援することも決めました。時には私たちの環境保護の姿勢を、「営利企業の枠を超えている」とさえ言われましたが、今では正しかったと思っています。

ボルネオでの筆者

というのも、これらの活動の情報を積極的に発信したところ、非常に多くの方々が「本物のCSR(企業の社会的責任)」だと、サラヤに共感してくださったからです。3年後には商品の売り上げが回復しました。また、「自然派」というサラヤの企業理念も同時に発信し続けたところ、会社全体の業績も連動して急上昇したのです。

つまり、理念の発信がブランド力の強化と、業績向上につながったんですね。

「きれいごと」がブランドとなる時代

自然派の商品開発、環境保護活動など、どれもサラヤの企業理念から行っていることですが、一見「きれいごと」に見える活動が、今の時代ではブランド力につながります。

実際、この十数年でサラヤの売り上げは131億円から376億円へと急上昇しています。その秘訣と詳細については、拙著でご紹介しました。よろしければ、ぜひ、ご一読ください。

更家 悠介 サラヤ代表取締役社長

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さらや ゆうすけ / Yusuke Saraya

1951年生まれ。74年、大阪大学工学部卒業。75年、カリフォルニア大学バークレー校工学部衛生工学科修士課程修了。その翌年にサラヤに入社し、取締役工場長に就任。1980年に専務取締役、1998年に代表取締役社長。その間の1986年には大阪青年会議所の会頭として「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の設立にも深く関わり、1989年には日本青年会議所(JC)会頭を務める。2014年、渋沢栄一賞受賞。

環境・生物多様性問題への造詣が深く、NPO法人ゼリ・ジャパン理事長、NPO法人エコデザインネットワーク副理事長、ボルネオ保全トラスト(BCT)理事など公職多数。

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